思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

消えたサンフランシスコ(上)

ブライアン・ハーバート著/関口幸男訳
☆☆
ハヤカワ文庫SF

たぶん、『首都消失』のほうが先だと思うが、日本一のSFの巨匠とは言え、アメリカで読まれているとは思えないので、単なるシンクロニシティか。また、本作では、同作とは反対に霧の中の視点で描かれていること、宇宙人が半径80キロのエリアを、波までありながら宇宙にもっていったこと、などが異なる。はっきり言ってジュヴナイルレベルの設定なので、小松左京が、本作を元ネタにブラッシュアップしたのが『首都消失』だと種明かしさたとしても、なんら不満はないくらいだ。
ちなみに原題は『prisoners of arionn』。
本作は、SF小説としては、(1)サンフランシスコが霧で覆われて、地球から切り離されたことが明かされる。(2)年代は明示されていないが、月世界戦争が何回も起こるくらい未来のテクノロジー。(3)主人公たちの現在と変わらない日常描写。の三要素からなる。
問題なのは、そのボリューム比率だ。SFとしては本筋である(1)の割合が1割もないのだ。それよりも少ないのが(3)。そのほとんどが、とある貧乏3世代同居家族の日常の不満が延々と描かれているだけなのだ(´Д`)
実は下巻の解説をちらっと見て、SFファンであるほど意外なオチが用意されている、というからターボで読んでいるのだが、それを知らなけば、確実に30ページあたりで本を閉じる(投げる?)レベルである。