思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

茶室殺人伝説

今野敏
☆☆☆★
講談社文庫

茶道を扱ったミステリーとしては、『千利休殺人事件』だかのタイトルのミステリーがあったが、本作は基本的に現代が舞台。
主人公は、表千家裏千家らに継ぐ架空の相山流なる茶道家に習うOL。下っ端である。とある茶会で、家元のいる茶室で、客人が包丁を刺して息絶えた。茶室で何が起こったのか? 殺人だとしたら犯人とその動機は?
一見、内田康夫的な軽いミステリーかと思いきや、茶道の歴史の祖たる千利休の歴史などに絡んでくる、歴史ミステリー。
千利休殺人事件』なんかと比べて、最大の問題点は、本作の流派が架空のものであること。その開祖(?)も、利休との因縁は、ありそうなレベルで設定されてはいるものの、どこまで行っても史実ではないわけで、歴史の謎に独自の解釈を挿れる歴史ミステリーではない。
まあ、出版社を含めて誰もが「歴史ミステリー」とは書いていないので、勝手に判断という、期待した私が悪いのだが……。
「茶道ミステリー」としてみれば、ボリュームもあるし、少しずつ人間関係の因縁が、現在の平面と、過去への、二次元的に広がってゆく構成は、読み応えがある。