『シャーロック・ホームズたちの冒険』
☆☆☆☆
ふつうは競作またはアンソロジーになるであろう、歴史上の実在またはフィクションの有名人が探偵役を務めるパスティーシュ風の中編集。芦辺拓あたりが書きそうだ。
『「スマトラの大ネズミ」事件』☆☆☆☆
あとがきによれば、結構大真面目なホームズのパスティーシュらしい。本家にどこまで幻想文学的な側面があるのか知らないが、そこは伝奇、SF作家だけあって、現実的という面では結構ずれがあることに好みが分かれるかも。
『忠臣蔵の密室』☆☆☆☆
単行本化が後になっているが、実は本作の為の資料を再利用して『チュウは忠臣蔵のチュウ』が書かれたそうな。密室の謎のハウダニットよりも、ホウイダニット、それも密室だけでなく、なぜ事件を起こしたのか、というところまで当時の事情に関連する、まさしくハード歴史ミステリというべき小品。おまけのダジャレも強烈(^_^;)
『名探偵ヒトラー』☆☆☆☆
ヒトラーが名探偵とは意表を突くが、これまたミステリーを愛好しているという史実もあるそう。ロンギヌスの槍の消失もので、それ自体の謎解きは、はっきり言ってジュヴナイルレベル。ただし、その後の真相というか、どんでん返しというか、おまけがあることで、一応大人のミステリーになっている。
『八雲が来た理由』☆☆☆★
本作自体で、小泉八雲の物語のパスティーシュ短編集的な構成になっている。知ってるようで知らない人物の一人だが、改めて勉強にもなる(『小泉八雲殺人風土記』なんかよりも)。ただし、本格度は本書中では最も低い。
『mとd』☆☆★
私的に、ルパンものには興味が薄い。加えて、『スマトラ…』以上に伝奇的なオチでは…。