思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

丹下左膳餘話 百萬両の壺

☆★

見た気になっていたのだが、改めて調べてみたら、本作も序盤だけ観ていた上に、『三万両五十三次』とごっちゃになっていた(^^;)
お話は、めちゃ昔話的というか、落語的というか、さる大名の次男坊に、先祖伝来のものだが、価値のなさそうな壺を譲ったものの、それに百萬両の価値があると判明し、取り戻そうとするが、勘違いや運命のいたずらで、ただの壺だと思っている人たちの手を渡って行く。『わらしべ長者』というか、典型的なマクガフィンもの。
壺がどうなるか、という意味では、洋画的な分類では、サスペンスになるのかもしれないが、日本的には、落語的な滑稽話という感じ。でもまあ、戦前だから画質が悪いことを差し置いても、全然面白くなかったなぁ。
丹下左膳が、居候というか、ヒモというか、用心棒をしている店の女将と喧嘩しては、結局言われたとおりにする、という天丼ギャグも、名人の落語の語りならともかく、映画としては「またか」という感じだし。
丹下左膳については、「餘話」とあるだけあってか、チャンバラはほとんどない。クライマックスあたりで、子供に「目をつぶってな。十数えるまで開けるんじゃねえぞ」と言うセリフはメチャ粋なセリフだと痺れたが。
壺を巡っては、大名、その弟(本作の主人公か)、壺が質屋(クズ拾い)からもらった少年、それを引き取った借金取りに追われる女郎屋とその用心棒たる丹下左前。壺が転々としたことで、いわば、利益関係者が四、五人いる。主人公の兄たる大名は、まあ悪者だからいいとしても、それ以外に、誰が泣きを見るのか。結論から言うと、うまい落とし所で、このあたりをして、本作を評価するのかもしれない。