思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『火の鳥(8)』


☆☆☆☆

これは手塚治虫版『平家物語』、いや、平氏でなく義経と弁慶を主役にしているので、『吾妻鑑』というべきか。上巻でも書いたことだけど。主役は、弁慶こと弁太。ネタバレかもしれないが(^^;)、ラスト、大陸に渡ったとされるのも義経ではなく弁慶なのだ。
おぶうが都の大火で死んだと思い、平泉でも妻を持つが、壇ノ浦再会するも、戦の中でもあり、あっさりと命を落とす。
特にこの乱世編では。文字通り戦に明け暮れる世の中でもあり、重要キャラに見えた人から、兵士はもちろん、百姓、都の住人にいたるまで、次から次に人が死ぬ。その真髄とも言えるのが、木曾義仲の都入り。手当たり次第とも言える殺戮から、強姦まで、戦争劇画か『ランボー 最後の戦場』か、というくらいハードな描写だ。このへんの容赦なさは、ほとんどのエンタメ作品であるにおいて、主役級は全然死なないのとは退去であり、私的には好感が持てるポイント。
本作においては、火の鳥マクガフィン的な役回りであり、権力と火の鳥がほとんどイコールのように描かれ、しかも登場するのは日宋貿易で入手した孔雀(^^;) 本物は、ナレーターとしてすら登場しない。
本作では、正史の裏に隠された権力者がいる、という伝奇ものによくある、『なんとか異聞』みたいな体裁になっている。もちろん、その権力者とは、火の鳥のことなのだが。