思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ザ・プロジェクト 瞬間・移動

☆☆☆★

原題は『ANTI MATTER』。反物質?? なぜこんなタイトルから内容もわからなければ、ダサすぎる邦題にしたのかも分からん。せめて『ザ・エクスペリメント 物質転送実験』とかにすれば良かったのに。
40歳くらいに見えるが、オックスフォードの女子大生である主人公アナは、電解質の電子への影響を調べている際に、物質が移動することを発見する。電子から始まり、イモムシ、ネコと、トントン拍子に物質転移装置は改良されていく。『ザ・フライ』シリーズでは散々苦労していたのにねぇ。いちおう、本作でも、マシンパワーが足りないから、『ハッピー・デス・デイ2』みたいに、サーバをハッキングする、という苦労は描かれるけど。
本作のテレポートは、一方通行というか、送るほうに90度に傾けた電極を設置するだけで、転移先である1メートルくらい先には何もない。いちおうワームホールとかブラックホールとか理屈は語られるが、ハードSFとは到底言えず、ネタバレ欄で書くが、ライトな広義のSFミステリーというところ。イモムシ(=ワーム)をテレポートの実験に使ったことからくるダジャレくらいしから思えないけどね。
細かいところでは、テレポートする際の演出は、初期の特撮のように、コマが変わると、物が消えている、というシンプル極まるもの。音も何もない。ここも、ハードSF的に考えるなら、空気の流出、流入があるので、何らかの音は絶対あるはず。
ルックは悪くないし、フィリップ・K・ディック的なアイデンティティをテーマにした映画という感じ。特に、後半は、アナの記憶力が衰えて、幻覚とともに、自我を疑う展開となるので。

以下ネタバレ

オチを先に言ってしまうと、本作は某映画のオチとそっくり。某映画のほうもオチだから、書きずらいけど(表サイトにアップする際には、タイトルを書かずにリンク貼っておきます)。
これもかなりネタバレだけど、『クレヨンしんちゃん 逆襲のロボとーちゃん』で描かれたような、あるいは『パーマン』のコピーロボットでも同じようなことが起きるのでは? と思わせる。
ラストの、アナのドライさが怖いし、ラストカットではイモムシが繭を作っているのを映すことて、万事解決ではなさそうなことを示しているのもうまいところ。でも、どういう伏線と理屈で、このあと何がどうなりそうなのかは、さっぱり分からないので、単に思わせぶりなだけだが。