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1968年のコメディ映画。私が知っている俳優は、準主役の高島忠夫。熟年の男をキャップ(キャプテンすなわちボスのことね)に、高島忠夫とオカマ(にしか見えないのだが、終盤で両刀らしいことが分かる)の3人組の詐欺師集団。そこに、その上前をかっさらう峰不二子的な女たちの、ドタバタ犯罪劇を描く。
キャップの七変化の、見た目以上に演じ分ける演技力や、競艇、ぼったくりキャバレー、公害会社、ベトナム戦争で大儲けした(なぜか大阪の)会社など、盗んでも観客が同情しないようなターゲットであることなど、あくまでもポップコーン、デートムービーとしてよくできた映画。
ま、俳優史的な興味のある人を除いて、今の若者が虚心坦懐に楽しめるか、と言われれば、寒いコメディ、と言わざるを得ないのだが……。
あと、音楽は、オープニングから、場面転換のブリッジ的になど、女声スキャットの同じメロディが何度も何度も流れるので、うんざりさせられた(´Д`)
私的な共感ポイントとして、キャップが、ロングヘアフェチである、というのが、「おっ」と思わされた(^^;) 60年代ってことは、日本でヒッピー文化が入る前?? ただし、劇中に出てくる2人は、カツラなのが残念。唯一、キャップの部屋の壁にロングヘアのラフ写真だかデッサンだかが2枚掛かっているのは、最初から見逃してないよー。むしろ、そっちのほうが芸術的でもあり、良かった。
これはラストシークエンスだが、ネタバレにはならない部分で是非語りたりのが、峰不二子が、一人で誰もいない道端で、街灯を何回も蹴ると、その度に街灯が点いたり消えたりする。それがめちゃくちゃ叙情的で素晴らしいのだ! 見ることなんてない薄い映画だと舐めていたので、これには素直にシャッポを脱がされた(60年代だけに古い表現)。
以下ネタバレ
まず、キャップがロングヘア好きな理由というのがいちおう語られるのだが、ラストにも、それが叶う訳でもなく、単なるショートヘアの峰不二子(的な役の人ね)の想いと魅了に気づいて、くっつく、というのが、作劇としてはわかるけど、趣味的には納得いかないなぁ(^^;)
しかも、中盤の山場である公害会社のヤマの成果を、その情報収集時に知り合っただけのロングヘア娘にタダでやっちゃうし(´Д`) もちろん、その父親が公害病で苦しんでいる、という義賊的な意味も含まれているんだけど。これじゃ、ロングヘアフェチが、「問題」「足を引っ張る障害」として扱われてるやん(´Д`)
コン・ゲームものとしては、どれもさしたるピンチもなく成功するので、面白いとは言えない。
コメディとして、人間模様というか、掛け合いを楽しむのが本領だろう。そういう意味では、キャップはフェチというかトラウマ? オカマは実は両刀だった、峰不二子は鍵開け名人かつ英語ペラペラだとか(文法だけでなく、ほんとにネイティブなみなのだ!)、拘置所にいる男の保釈金はウソだとか、それぞれに小さなどんでん返しがある。唯一、高島忠夫だけが裏表のない終始一貫しての三枚目役。
中盤の、公害工場に、自衛隊不発弾処理班を装って避難させる、というのは、いくらコメディ映画でも、受け入れがたいなぁ。ま、私が右側人間だからかもしれないけど。『ルパン三世』とかと大差ないと思えばいいのかもしれないが。いちおう脚本的には、後のシーンで、闇の何でも屋が自衛隊の制服とジープと金属探知機を用意した、というシーンが言い訳/説明的に出てくるのだが。
ま、ヒロインの女優が、特撮ものの水野久美とかよりは魅力的だったかな。