思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

フューチャーワールド


☆☆☆★

絶対に後から内容を思い出せないであろう邦題。でも、原題そのまま。
公式YouTubeで自虐気味にタグが入ってけど、まさしく『マッドマックス』にあやかった映画。
シリーズの『1』『3』『4』を足して、4で割ったような作品。足りない分は、アンドロイド美女で補っている。へんなバランスであることや、後述するミラ•ジョボビッチのインパクトから、いちばん近いのは『マッドマックス3 サンダードーム』だろう。
最初は、アンドロイドのナレーションから始まる。予算もあまりないので、CGも特殊メイクもなしの、普通の女優をアンドロイドと言い張る、というパターンだ。まあ、それはいいだろう。
パワーも強いが、主に風俗街で働かされている。モーターヘッドのいない『ファイブスター物語』のファティマみたいな感じ。
主人公は中東かヨーロッパ系なのに、母親はチャイナ系のルーシー•リュー(なんか久しぶりに観たかも)で、他の人は人種問題は気にならないのだろうか……?
それはともかく、病気の母親を治す薬があるという場所を教わり、そこへ向かうロードムービーだ。移動手段はバイクがメインで、砂漠を走るバイクの撮り方は、完全に『マッドマックス4』だ。
最初に寄った売春宿で、悪者のアンドロイド女(冒頭で復活させられた)に殺されかけるが、お約束として良心に目覚めて、悪者を裏切った彼女に助けられる。これが、伏線も葛藤も何もないのが問題で、これ以降も、脚本の整合性のなさは随所に出てくることになる。
砂漠を彷徨い、ようやく薬がある場所にたどり着くが、そこがサンダードームみたいなところ。サンダードームならぬ命をかけた殺し合いをするプールもあるし、何より女支配者がいる。それがミラ•ジョボビッチ。これがまた、大作映画じゃないから(ミラは、日本でこそ知られているが、ハリウッドではそれほどスターってほどじゃない、という話もきいた)ヤケクソなのか、逆に縛りがないから、のびのびというか、はっちゃけた怪演を見せてくれる。うまい例がすぐ出てこないが、『ダークナイト』のジョーカー的な狂気っぽい感じだ。
この場所では、ドラッグも普通に、なのか、彼女がグループを支配するためになのか、使っていて、ドラッグを肯定しているかのような描写が、ちょっと問題なのかも。
母親を助ける薬を渡す条件として、ゴツい男と戦って、その腹を裂いて取り出す、デスマッチをすることになる。華奢な主人公へのハンデにしても、素手の男に対して、山刀のような武器を渡す、というのはいかがなものか。主人公が勝つロジックも含めて、このシークエンスも首を傾げる部分。
アンドロイド女といえば、ミラが自分の女にしようとするが、それを泥棒猫したのが、ダメージを負っていた彼女を直した機械屋の女。そりゃ、ミラでなくても激昂するよなぁ。
全体として、脚本として全体の整合性はとれていないのだが、場面ことに何か面白いことをやってやろう、という週刊連載マンガのようなパワーがある。なので全体として破綻はしているが、『マッドマックス』の亜流、ミラの怪演という2点を筆頭に、印象的なポイントは随所にある、嫌いになれない作品。

以下ネタバレ

そこへ悪者が襲撃し、どう見ても格の違いは明らかなのに、ミラがやられてしまう。悪者の腹に刀を刺したのに、平然と逃げた主人公をバイクで追う(ここも脚本問題ポイントね)。
ラストは、なんとアンドロイド女は主人公ではなく、機械屋女とバイクで旅に出る。本作で唯一、伏線とどんでん返しが効いているのが、冒頭のアンドロイドのモノローグと連なるこの結末だ。以下、ネタバレ前の文章に戻る。