思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ゴーギャン


☆☆★

フランスの画家ながら、南国タヒチへ赴いて絵を描いたことで有名なゴーギャンの半生を描いた映画。半生と言っても、売れない画家をやっている冒頭と、ラストは元気なうちに帰国しているので、人生の3分の1か4分の1くらい?
そもそも境界が似ているのだろうが、内容的にはゴッホを扱った『天国の扉』とそっくり。有名な絵画そっくりの人物と構図(当たり前だが)が出てくるのも同じ。絵のタッチを取り込むところまではしていないが。
知らないお前が悪い、と言われれば一言もないが、そもそもタヒチってどこ? フランスからどれくらい遠くて、移動の日数や旅費はどれくらいかかるの? という点は完全にスルー。せめて出発前の酒場の客のセリフででも入れとくべきだったのでは?
タヒチに行くと、ジャングルの土人らしき部族と仲良くなり、妻を紹介してくれる。まず、めちゃくちゃ無愛想なのに、なんで気に入られるの?? さらに、妻は若いのだが、ゴーギャンのほうは、日本人の私が見る限りだが、初老にしか見えない。ちょっと異世界転生系なみに都合良すぎやしないか? 史実ではもっと若い、または若く見えたのか、日本のテレビのバラエティ番組にあるように、秘境に泊まろう的におしかけて、とりあえずそのへんにいる人にモデルなってもらう、くらいまでは許してもらったんだとばかり思っていたが……。
脚本的にも、妻をもらう条件として、月齢がひとまわりするまでに幸せにできなければ云々、というタイムリミット・サスペンス要素があったのに、それについて何の回収もなかったし。まあ、最後には若い男と浮気するので、それの伏線だと取れなくもないが、ひと月とかは完全に過ぎた後だしね。
映画としては、ジャングルの中のゴーギャン、というショットそののは美しいのだが、ゴーギャンの絵じたいはあくまでも人物画(美術史的には風景画も残しているのかもしれないが、作中では風景画を描いているカットは皆無か、ほとんどなかったはす)なので、テーマとは合致していない。