思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

日本幽霊画紀行 死者図像の物語と民俗

堤邦彦
☆☆☆★
三弥井書店

「幽霊画を出すと雨が降る」
このへんは、微笑ましいほどの神道的な日本教っぽさを感じるところ。

「かつて津軽地方では、亡くなった肉親の姿を幽霊画に写してお盆の折に掛けて弔う風習があった。イタコの口寄せにみるように、津軽の盆行事は年に一度めぐってくる大切な死者との交流の場に違いない。」

「光源寺の「産女の幽霊」木像」
幽霊の木像までがあるのは日本の寺ではここだけらしい。

たいてい、怪談の挿絵を除けば、絵としての画力はイマイチのものが多いが、純粋に素晴らしいもの。
「「宿場女郎図」全生庵蔵」
「来迎寺乙本「幽女図」(竹文)」

発見だったのが、各地に円山応挙が描いたと言われるものがたくさんあること。もちろん、ある程度はそれっぽいが、あきらかに偽物か多い。昔の人は、今のように本やテレビやネットがないので、こんなのでも充分通用したのだろう。真贋云々よりも、応挙が、空海のように全国を行脚し、各地で伝説的存在になっていたことの方が興味深い。

ふと気がついたのだが、現代の幽霊のスタンダードたる、手をぶらーとしたポーズは本書中でも片手で数えるほどしかない。もしかしたら、死ぬ前に手首を落とされたり、骨折したり、あるいは力が入らないそとの表現なのだろうか?