思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『永遠の門 ゴッホが見た未来』☆☆☆★

ゴッホの半生を描いた作品だが、ストーリーはどうでも良くて、芸術映画である。
ゴッホの数々の絵を完全再現したルックは、偏執的とも言える凄さ。
ウィレム・デフォーゴッホ肖像画そのまま、という感じ。それ以外も、実際に絵を描いているシーンは、現存する画をモチーフにしていて、モデルがそっくりなことはもちろん、街で出会う人々でさえも既視感のある人ばかりなのだ。逆にいえば、本作に出てくる全てのシーンは、ゴッホの絵からインスパイアされたものだと言っても過言ではない。
全編手持ちカメラで、固定されたカットがほとんどない。
ゴッホの主観カット(一人称視点)では画面の下3分の1がぼやけている。作中では何も説明がないので、めちゃくちゃ不安になる。撮影ミスなのか、ゴッホは下半分の視界がぼやけていたのか? と大混乱する。調べてみたら、これはゴッホ色盲だったらしいので、その表現??
ゴッホの画には赤味がほとんどなく、黄色と青、緑とオレンジで描かれている。どんなフィルターをつけたのか、全カットに画質調整を施したのか知らないが、それを映画で再現しているのが凄まじい。それを表現したのが、主観カットにおいて下半分をぼかす、という手法なのか? それにしてはちょっと分かりにくすぎる。完全に赤味を抜いた、他のカットよりも極端にモノトーンにする、とかいう方が良かったのでは?
全カットの画質をいじったといえば、『アヴァロン』よりも『スキャナー・ダークリー』(未見だが)を連想させる。それでいて、いじっていることを感じさせないのが凄い。アカデミー撮影賞もの(とったかどうか知らんけど)。
ドラマ的にクライマックスとも言える耳を切るところは映さず、包帯を取ったあとも、左耳がほぼ映らないように、右半分か、正面でも右寄りに写し、左から捉えたカットが1つもない。
ゴッホの狂気がテーマだが、弟のテオや、ゴーギャンに頼りっきりというか、ホモ的または彼らを父親のようにして依存する、というように描いている。

2018年 アメリカ、イギリス、フランス