思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

きさらぎ駅

☆☆☆

2ちゃんねるに書かれた都市伝説が元ネタということで、『電車男』プラス『犬鳴村』みたいな感じかな? という様子見的な感じで観た。
異世界ものというか、現実とちょっとズレた場所に行く、というのは、低予算映画としては定番。
前半は、主人公が卒論の取材として、佐藤江梨子が遭遇した不思議体験を聞く、再現VTRスタイル。これだけならよくある怪談をビジュアルで見せる、映画では定番の手法なのだが、なんとこれが一人称視点。しかも、FPS的な、視点人物の手足が見切れるタイプ。てっきり視点人物たる佐藤江梨子のギャラだかスケジュールの問題でそうやってるんだと思ったけど……。
現実なら、足音などの、いわゆる気配で気がつくはずだが、視覚の死角から急に画面に入ってくることで驚かす手法など、完全にホラーゲームの演出である。低予算なのでCGもプレステ2くらいにチープで、「実はゲーム世界でした」というオチへの前振りかと思われても仕方ないレベル。とは言いながら、ホラーのアドベンチャーゲームはゲームの年代記とかで知ってるだけで、やったことないから、あくまでもイメージだけど(^^;) ただし、そのルックとしての、黄色味を抜いたルックは、金をかけずに非現実的な雰囲気を出していて、アイデア賞ものかと。
本作の演出は、ひとことで言えば、お化け屋敷のそれ。遠くにいた人物(化け物)が、ワープするように直近に出てきたり。やっつけた化け物(区別のつかないやつではなく、化け物化する前まで人間として会話していた人物)が、爆散したのき、何度も襲ってきたり。ゲーム的と言ったが、本作の主人公以外の登場人物は、まさしくロールプレイングゲームNPC(ノン•プレイヤー•キャラクター)、アルゴリズムや、決められた言動を繰り返すだけのキャラにしか見えないのだ。
そこで、バディだった女子高生を出口らしき光の扉に先にやったら、1人入ったところで扉が消滅
、入らなかった佐藤江梨子が脱出できた、という謎(鬼?)仕様。
そこまで聞いた主人公は、きさらぎ駅へ行く手順を推理し、それを試すと、行けてしまった。そこでは、まさにゲームのように、話で聞いた人物が、聞いた通りの言動を展開する。
ここからは、タイムループもの、あるいはデスゲームものとしての側面が出てくる。画面は、普通の映画のような、主人公を中心にした三人称視点である。実際には、映像のように細かいディテールまで話せた(覚えていた)ということはあり得ない(一人語りから再現ブイになる映像のマジック)ので、ワンカップ酒が落ちて割れたとか、何の意味があったんだよ?! という、何周か経験していないと気づかないようなところまで、初回でどんどんクリア(?)していく。
とにかく、まじめに考え出すと、キリがないくらいにおかしいところが多いという点では、逆『テネット』といえるかも(^^;)
ただし、82分という尺に二周半のプロットを入れ込んでいるので、展開が早くて退屈しないのが、お化け屋敷として十分な仕上がり。
YouTube『オカルトチャンネル(タイトルうろ覚え)』で1時間に渡ってレビューされていたのが面白かったが、ツッコミどころは満載。それは演出としてもそうだが、脚本じたいの矛盾も多々ある。その場その場のインパクトを、最重要に考えているからで、その意味ではとても脚本を何度も書き直した(本当らしい)とは信じられないのだが、「このシーンに、もっと驚かせる仕掛けを足せ!」と言われ続けるままに、マシマシにしていくと、こういう矛盾する仕上がりになるのも分かる。
明らかにB級(ヘタすりゃアメリカのテレビ映画なみのz級)帝良作映画なのに、なんでこうみんなの評価が高いのか理解できないが、そのサービス精神は認めざるをえないのかも。