思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

炎628

☆☆☆★

『パッション』に続けてこれを観たのはキツかったよなぁ(^^;)
てっきり第二次大戦の、紅蓮の炎に包まれた戦場を描いたドンパチミリタリー映画かと思ったら、全然違った。
まずは、本作は「顔芸」映画である。顔のアップを真正面から撮ったカットが多く、しかも割と派手目な表情を作っている演出が多い。ドラマ『アオイホノオ』のような、歌舞伎みたいに顔を歪めるのもけっこうあるが、静かながら、絶望や恐れなど、微妙な感情を表現した素晴らしい演技もある。ドイツ兵に乱暴された後のヒロインの表情とか。
もう一つは音の演出。近くで爆発が起こると、鼓膜をやられて音がしておかしくなる、というのを半世紀前に早くも(?)取り入れている。
本作は、ソ連パルチザンというのか、正式の軍人ではないが、軍人の元で武装組織化された民兵というか、気軽にそういうのに入った結果、戦争の悲惨な現実に翻弄される少年を描く。『火垂るの墓』をハードにしたような作品。
序盤に、森の中で年上の娘と出会うので、そのままロードムービーになるかと思えば、そうはならなかった。主人公じしんから見ればロードムービーなのだが、娘とはクライマックス前に別ルートを辿るのだ。
現代ではできない、さすがはソ連だなあと思ったのが、鳥の卵を踏んでヒナが死ぬ、牛が撃たれて、断末魔の目のアップなんかが出てくるところ。これ、実際に殺してるよねぇ……。あとでおいしくいただいたんだろうけど。
戦争映画なので人間の死体も出てくるが、わりとリアルっぽい死に顔。ラストでは、記録フィルムから、死体の写真もちょっと出てくるけど。
原題はロシア語だから読めないけど、少なくとも数字は入っていなかった。「628」というのは、ラストカット後にテロップで出る、ソ連の村がドイツ軍によって滅ぼされた数だそうだ。
ミリオタ的には、機関銃を発射したあとに銃身から湯気が上がるのがポイント。さすがは寒いところだけある。
進撃の巨人』でオマージュされていたという、民衆を小屋に閉じ込めて燃やすシーンは、火をつけた後の内部の描写が一切なかったので、『進撃の巨人』のほうが、ある意味先を行っている。正しいオマージュと言えるだろう。

以下ネタバレ

ラスト、捕らえたドイツ軍が持っていたヒトラーの写真を銃で撃つと、一発撃つたびにナチス関係の記録映像が逆回しで再生されるのは、もうひとつ意味がわからなかった。主人公が、時を戻してやり直したい、戦争の元凶たるヒトラーをいなかったことにしたい、ということかのかなぁ……とは思ったが。ラストシーンでは、主人公がまた別のパルチザンに合流したのか、別の、同じような少年が同じ運命を辿る、という無限ループを示唆しているのか。