思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

独ソ戦

☆☆☆☆
岩波新書

執筆の背景はあとがきに詳しいが、独ソ戦を戦史だけでなく、世界史、政治、経済、思想的に幅広く概説したもの。
入門書だからといって、いわゆる図解雑学シリーズのような浅いものではなく、必要十分な内容。唯一の不満は、ドイツもソ連も、非道な行為を行なっていたと、詩的・比喩的に書くばかりで、具体的な記述がスルーされている箇所が多いこと。もちろん、具体的な死傷者・行方不明者数が記されているところも多いので、それがない、ところは、ミクロの記録はあるが、信頼に足るデータが揃っていない、ということなのだろうか。

「日本の総人口は約7138万人であった。(略)戦闘員のうち、210万人(略)が死亡している。(略)非戦闘員の死者は55万人(略)ソ連は(略)1億8879(略)人口を有していたが(略)戦闘員866万ないし1140万人を失ったという。(略)民間人の死者は450万ないし1000万人、ほかに疫病や飢餓により、800万から900万人の民間人が死亡した。(略)ドイツも(略)総人口6930万人から、戦闘員444万人ないし531万(略)を死なせ、民間人の被害も150万人なし300万」

「大粛清(略)1937年から38年にわたって、3万4301名の将校が逮捕、もしくは追放された。そのうち、2万2705名は、銃殺されるか、行方不明(略)軍の最高幹部101名中、91名が逮捕され、そのなかの80名が銃殺された(略)元帥も、当時5名いたうち、3名が銃殺された」

「1944年までに、280万人の住民が強制労働者として、ドイツに送り込まれたという」

「570万名のソ連軍捕虜のうち、300万名が死亡した」

「「ファシスト抑圧者に対する祖国国民戦争」すなわちパルチザン

「士気阻喪した者や服従しない者を集めて、危険な任務に投入する「懲罰隊」制度が導入された」
ソ連のこの制度(?)は、後の中共のやり方と全く一緒。

スターリングラードで捕虜となったドイツ軍将兵9万のうち、戦後、故国に生きて帰ることができた者は、およそ6000名に過ぎなかった。」

「「城塞」作戦で投入されたドイツの新型戦車「ティーガー」」
独ソ戦も終盤に至って、ようやく登場したんだね。

「1943年(略)114万(略)の兵員、2800両の戦車(略)ソ連軍は」
第二次大戦も終盤なのに、凄まじい物量である。

「ドイツ軍は(略)当該地域の住民も強制移送の対象とした(略)その数は数十万におよぶとされる」

「ドイツ系移民が(略)財産を没収され、飢餓や伝染病に悩まされながら、多くは徒歩でドイツに向かったのだ。その総数は1200万ないし1600万と推定されている。うち死者は100万とも200万ともいわれる。」

独ソ戦の初期で生起した大規模な戦車戦については、拙論『幻の大戦車戦 消された敗北』」