思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『帰ってきたヒトラー』

☆☆☆☆
北京原人』みたいな単なるタイムスリップものかと思いきや、ポリティカル・フィクションの佳作だった。
ヒトラーのそっくり俳優を実際に街中でゲリラ撮影し、政治や歴史問題について意見を聞いたり、議論をふっかけたりする。セミドキュメントであることは、街中の映像が荒くなることで推測できる(これも計算のうちかも)。
本作のテーマは、過去の人物のカルチャーギャップを描くのではなく、ヒトラーという強烈な触媒を用いて、民主主義とは、政治とは、というテーマを問うものなのだ。ある意味、『聖おにいさん』と似たコンセプトかも。
ドラマ的クライマックスで、ユダヤ人問題に触れるが、これも現代の基準(ポリコレ)に逃げないのが良かった。本作は、歴史ものとして、終始フェアに作ってあると思う。
終盤で、メタ構造が出てきて、ある種の夢オチか?とがっかりしかけたが、そうはならなかったのが良い。ヒトラーではないほうの主人公の扱いの酷さは、さすがドイツ(ヨーロッパ)映画(^_^;)