思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ダヴィンチは誰に微笑む

☆☆☆☆

10年くらい前、知られざるレオナルド•ダヴィンチの、キリストを描いた絵画が、オークションで、約450億円で落札された。
その前後に何があったのか、関係者へのインタビューを元に、美術界と金を巡るドキュメンタリー。
ミステリーでは、贋作ものというのはサブジャンルとして地位を占めるものがある。私も、北森鴻高橋克彦なんかも読んでいるので、まあこういう世界であることは知っていたので、別にショックは受けなかったが。
この『救世主』におけるポイントは、描かれた当時の再現といえば聞こえはいいが、少なくともヨーロッパ人からすると、やりすぎな修復作業であろう。あとは、レオナルドの工房の昨日であることは間違いなかろうが、本人の手がどこまで入っているのか、という問題だ。卑近な例でいえば、『キカイダー01』は、石ノ森章太郎が描いたマンガである、と言って良いのか、というのと似ている(たぶんストーリー構成だけか、よくてネームまでで、ペン入れはアシスタントによるマンガ)。
少なくとも、ニューヨークの美術館に展示された絵を見て涙を流している人のほとんどは、ネームバリューに影響された、詐欺や洗脳にひっかかりやすい人じゃないかなぁ……。「作者不明」「何を描いたかも不明」とキャプションがついていたとしたら、そのうち、どれだけの人が、絵そのものから同じだけの感動を受けるであろうか……?