思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

高瀬舟

☆☆★

森鴎外の短編小説を中編映画化したもの。原作は未読。
とある流刑人が、都から出発する、舟の上で役人や船頭と交わす会話から、殺人の罪で流刑となるまでの半生を回想する。
まるで1時間のテレビドラマのようで、これを書く時点では調べてないが、ほんとにそうかもしれない。
全編に、小説を朗読したようなナレーションがあり、半分は主人公が会話の中で半生を語るのだ。
捕物帳的な探偵小説、または法廷ものとしては、ありがちで、殺人の罪を認めたくらいだから、悪人かと思いきや、自殺して死にきれず苦しんでますいた弟を楽にしただけで、しかも弟は怪我で下半身付随、近所の子供にまでバカにされるという、貧乏かつ不幸な境遇。
それでも、人の良い主人公は、弟への自責の念(とは直接言わないのがさすが森鴎外であり、現在の日本映画に失われた映画的演出なのだが)から、罰として罪を恬淡と受け入れる。