思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

X教授を殺したのは誰か?


ドドリス・アンドリオプロス原作/タナシス・グキオカス漫画/竹内薫&竹内さなみ訳
☆☆
講談社ブルーバックス

「数学ミステリー」という副題がついている。容疑者は数学者たちで、供述も数学的で刑事の手に追えないので、数学者が呼ばれる、というのでハード数学ミステリー(そんなジャンルはないが、)かと期待したのだが、ちょっと違った。
容疑者の供述は、あまりにも現実的にはあり得ないもので、まんま数学クイズ。最初のほうこそ、中学の図形問題なので、暗算(?)でも解けるが、後半は二次方程式なので、普通の人は暗算はムリ。まあ、いわゆる紙とペンで取り組むのが適当な難易度であろうから、間違ってはいないと思うけど。
致命的なのが、マンガとしてヘタクソすぎる、ということ。脚本のト書をそのままモノローグにしたようなナレーション、コピペ、アメコミ調子にしてもへんな構図、そもそも絵がヘタクソ。数学者が描いた、というならまだしも、いちおうプロの絵描きが描いたらしいのだから、これじゃあ、日本のビジネス・ハウツーマンガのほうが遥かにマンガ力が高く、日本のマンガのレベルの高さを逆説的に実感できる結果に。

以下ネタバレ

眼目のミステリーとしては、しっかりと意外な犯人を提示しているところは、(唯一?)評価できる部分。殺害の動機も、しっかりとハード数学ミステリーしている。
また、ある種の叙述トリックとして、容疑者の数学者たちが、科学か数学に関心のある人なら、誰でも知っている人だが、ファーストネームにすることで、よほど数学史に詳しい人でないとわからないようになっているのも仕掛けのひとつ。ただし、先述の、絵がヘタクソすぎて、顔が似ていないのと、そもそもそれにあまり意味がない、という問題はある(^^;)