思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

黒真珠


連城三紀彦
☆☆☆☆

やっぱり連城三紀彦は、史上最高の叙述トリック作家だわ。
基本的に一人称で、たとえを多様した、小説的修辞の流麗な文章に浸っていると、「言ってなかったっけ?」的な(^^;)告白が次々に飛び出てくる、というのが連城三紀彦ミステリだ。
後出しジャンケンだと言われるかもしれないが、オチの一発ネタではなく、序盤からそれを継続して繰り出すのは並大抵の力量ではない。
本書は、単行本未収録作品ばかりで、前の6、7割が中編、後は短編となっている。基本は恋愛で、ミステリ的なツイストのあるものが選ばれているようだ。ただし、特に短編の中には、普通の小説の「気の利いたオチ」程度のラストの一捻りだけ、というものも一部あるが。
そんな構成はもとより、文章も凝っているので、精神的にも時間的にも、じっくり取り組む必要はあるが、それだけの価値ある秀作だ。