思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

シンデレラ城の殺人

紺野天竜
☆☆☆★
小学館

序盤の、ラノベ感満載の文章と展開に、これはハズレだな、と辟易していたのだが、読み進めるうちに、引き込まれて行った。
読み終えてみれはま、ラノベっぽさは最初だけ。むしろ、取ってつけたようで明らかに浮いている、とも言える。
そもそも、これ、最初こそ童話『シンデレラ』をなぞっているものの、はっきり言って無関係もいいところ。共通点は、魔法がアリの世界観、ということと、ガラスの靴(が凶器になった)、ということくらい。
ミステリーとしては思っていた以上にシンプルで、シンデレラと踊っていた王子が自室に戻った際に殺され、シンデレラが殺人容疑で捕まる、ということくらい。本作は、なんと法廷ミステリーなのだ(^^;)
NHKで、昔話をモチーフにした裁判アニメ番組があったと思うが、それとも違うのが、先に書いたように、童話『シンデレラ』の内容とは全然関係ない殺人事件を扱ったものであること。ふつうに、魔法ありの、中世ヨーロッパを舞台にしたミステリーとして読むべき作品だ。
この1つに事件以外に連続殺人は起こらず、さまざまな仮説や反論などを通して、事件の様相は二転三転する。ツイストの回数だけで言えば、連城三紀彦の『造花の蜜』(だったかな? 誘拐もの)に匹敵するのではないか。
ただし、エピローグのツイストは余計で、蛇足以外の何物でもないかな。
なお、最大のツッコミは、夜の12時まで残り30分となってからが、どう少なく見ても1時間は経過しているくらいの展開と言動があること(´Д`)