思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『妖刀物語 花の吉原百人斬り』☆☆☆★

片岡千恵蔵主演。顔に大きなあざのある捨て子が、関東の田舎の商家の大旦那になる。
商人仲間に連れられて吉原に行ったところ、どの遊女も大きなアザに恐れ慄いて逃げられる。これまた窓際族の遊女の一人には否定されなかった。見合いを繰り返しても振られ続きで女に免疫がなかった千恵蔵は、その女にハマってしまい、太夫にさせてから見受けさせる約束を主人としてしまう。(あらすじがめんどくさいなぁ)
要するに、女にハマった男の破滅物語なのだが、このタイトルの意味がようやくわかるのが1時間くらい経ってから。そこで、ようやく本作が『一人ごっつ』における「○○まで何秒」ネタであることが分かる(^_^;)
ネタバレになるが、片岡千恵蔵が吉原で乱心するのがなんとラスト3分! 『ジョーカー』もそうだったが、もうちょっと別のタイトルだったらラストの驚きは全然違ったのになぁ・・・。
吉原の遊女から太夫へのプロセスが知れるのは興味深いところなのだが。
あとは、東映時代劇にしては、ちゃんと暗いところがあって、画面の暗いところがしっかり黒く、画面のメリハリがついていたのは◎。室内は明るくて、影も多重に出ていたが。
個人的に不満が2つある。
1つは、ヒロインがブサイクであること。藤山直美そっくりのブサイクな感じなので、最初に遊女仲間からハミゴにされているのには説得力があるが、太夫になるのには全く説得力がないし、画面を見よう、という動機に欠ける(^_^;)
もう1つは構成的に、冒頭で捨て子が描かれて、すぐに50代くらいの商家の旦那さんになっているので、単にモテない男の女狂いにしか見えないこと。時代劇版『名前のない女たち』やん。いちおう商家の人足たちが「旦那も苦労して一代で店を大きくしたんだから、その金を何に使おうが自由」というセリフがあるが、その苦労や、その家庭で何人もの女に振られるのを10分くらいかけてじっくり見せてくれていたら、主人公への感情移入もできていたのになぁ。「持てない男」として、共感できる要素は十分にある映画なのに、誰にも感情移入できなかったのは残念。
ラストの大暴れも、妖刀とはいえ、ただの商家のおっさんが捕り方に取り囲まれているのに、何十人も切り続けられるのは、設定もそうだが、殺陣にも説得力がない。取り押さえようというヤツらがボンクラにしか見えないのだ。桜が舞い散るのは幻想的だが、カメラがパンアップして引いていくので、桜の木よりも上から花びらが落ちているのがバレるのも残念。
ラスト前までは☆☆☆☆だが、ラスト5分で☆☆になった(^_^;)