思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

女賊と判官

☆☆☆★

有名なマキノ雅弘監督作品は初めて観る。
始のうちは、女盗賊が手前の屋根から下へ降りて画面から消え、下の道から現れるのを1カットで見せるなど、画面の手前から奥へなど凝った見せ方に、素直に驚いていた。
ところが、途中から大人向けと思われた要素が変わり、なんとミュージカル仕立てであることが明らかになる。それも、登場人物の心情をそのまま歌詞にした歌で、おまけに、それを本人が歌う。ミュージカルというより、幼児向けテレビのそれである。
物語は、ふと旅に出た片岡千恵蔵と、お上の手から逃れるために江戸を離れる女盗賊が、お互いに正体を知らずにツンデレ東海道中、という話。
ミュージカル嫌いの私としては、中盤以降、結構な頻度で挟まれるミュージカルと、後半に出てくるマセガキ/クソガキが鬱陶しいことこの上なかったが、白黒ながら画面の美しさ(何が映っているかよく分かる)に惹かれて、見通すことができた。
あとは、真っ暗な中にたくさんの御用提灯が浮かび上がり、それが迫ってくるなど、今見ても斬新な演出も随所にあり、監督の演出力を実感することができる。
あと、中盤あたりの旅籠に出てくる女中の啖呵というか、講談師はだしの立板に水のセリフは、現在の邦画では失われてしまったもので、これまた味わい深い。
個人的には、女優陣は好みの細面の人が多かったのだが、特に女盗賊と、もう一人の区別がつかなくて困った(^^;)

以下ネタバレ

当時の人は、常識として、分かって観るのかもしれないが、現代の私が予備知識なく観て一番驚いたのが、本作が『遠山の金さん』であったことだ。たしかと遠山とか金さんとかの名前は、クライマックスのお白洲まで出てこなかったんじゃなかったっけ?? 狙ってたのか、時代のせいでそうなったのか……?