思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『1917 命をかけた伝令』☆☆☆☆

こちらは評判通りの秀作。疑似ワンカット撮影の戦争映画、というテーマが見事に昇華されていた。
劇場だったら酔ったかもしれないが、自宅で見る分にはそれほどでもなく、さらに不自然な(急な)パンとかがなく、全てが計算され尽くして、切り返しに相当する回転ショットとかがなされているのが素晴らしい。これほど、どうやって撮ったんだろう?!
 と驚く映画もないだろう。『バードマン』が不自然なカメラワークだったのと対照的。
ただし、終わり方は少々不満。大佐に伝令を伝え終わって暗転し、「ご苦労だった」というセリフと共にエンドロール、の方がスマートだったんじゃないかなぁ。亡き相棒の兄との会話や、木の麓へ歩いて行って恋人の写真を見る、とかの余韻は不要。
舞台としては、1カットなのだが、まるで3DCGのゲームのよう。何もない荒地や道路をダラダラ歩く、というのがなく、目を引くガジェットが次から次へと映り込んでくる。家を通り抜けるところでは、家の外壁に立ちションしている兵士たちがいたりするのには笑ったけど。そんなふうに、まるで早歩きか、普通に歩いているのに、地面が倍くらいの速さで流れているかのような、圧縮された空間、という感じ。
主役の二人は、これが? というくらい華のない顔で、これで2時間持つのか? と心配したが、終わる頃にはそれなりの風格を持っていた。戦車プラモ好きな私的に、欧米の兵士のフィギュアは顔が細長すぎると思っていたが、本作を見ると、納得できた。