思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

自衛戦力と交戦権を肯定せよ


小山常実
☆☆☆☆
自由社

雑誌の論文くらいの分量だが、憲法九条のキモともいえる、交戦権について書かれた前半と、憲法成立にまつわる後半からなる。
戦力も交戦権もない、となれば、義務教育を受けた日本人ならば、庶民的感覚からして、兵器のみならず銃弾の発砲すらできない、と理解すらのが正しいであろう。
ところが、国際法を前提にすると、話がちがってくる。
交戦権とは、戦争(実は国際紛争を解決する手段の中の一部に過ぎない)に付随するさまざまな権利の集合体なのだそうだ。

「戦場が常に日本国内となる以上、無差別爆撃もあり得る戦場近辺の都市空爆は、日本と戦う敵国だけに許された特権となる。」
専守防衛とは、民間人の犠牲を前提とした主義である、という一例。

「日本側は敵国商船に対して手を出せない(略)敵方は、公海上に於いて、日本の商船や中立国船舶に対して臨検・拿捕の権利を持つし、日本の商船を没収することもできる。」

「敵方に中立国商船を通じて資源物資が渡らないようにする重要な手段が、敵港に対する戦時封鎖である。(略)日本側にはその権利は存在しない」

「結局、普通の中小国と長期戦で戦った場合、日本は徐々に弱っていき、必ず敗北するであろう。補給が効かない日本と、補給が行われる敵国との間では勝負が見えている」
臨検ができないのはしっていたが、それがどれくらい深刻なことなのか、よく分かる。侵略戦争を放棄した経済大国たらんとする日本であれば、直接発砲しない、臨検や港湾封鎖こそ活用すべき手段だろう。

「交戦権の1つに戦線布告の権利がある。(略)戦力を持っていなくても(略)他国と共同して(略)勝利すれば
(略)講和条約締結交渉にも堂々と出ることが出来よう。」

「第九条の起草者であるケーディスも、連合国側の最高機関である極東委員会も、全てが自衛戦力肯定説を否定していなかった。」

「今日においても、交戦権とは何か、きちんと確定していないし、よく分からない所がある。当時はもっと分からなかったようである。」
おそらく、米軍は単に「日本に全ての戦闘行為をさせない」という程度の軽い気持ちで「right of war」とか書いたに過ぎない
じゃないかなぁ。知らんけど。何しろ、日本国憲法の原案を書いたアメリカ人には国際法憲法の専門家はいなかったんだから。本書にはそこまで書いてないけど。