思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

悦楽交差点

☆☆☆

いわゆるピンク映画ってことになるのかな?
男女別通行人測定調査のバイトで、千人目の女を自分の嫁にすると決めたキチガイ男の話。
その女がブサイクなおばさんだと映画にならないので、とうぜん美人なわけだが、既婚者というだけにとどまらないところが本作のミソ。
主人公はオタク趣味でこそないが、ほぼそんな感じの冴えない中年。元からでもなさそうだったが、嫁と決めた女のためにストーキング術をマスターした。しかしながら、以前からの商売女(ブサイクなでぶっちょのデリヘル嬢)とは、相変わらずちょくちょく買っていて、しかも彼女は主人公がストーカーであり、その事実も知っている。何しろ彼女が来ている主人公の部屋には「嫁」の写真や調べた情報が貼りまくられているのだから。このあたりが、本作がうまいところ。
一方の「嫁」のほうは、夫は会社の後輩と不倫しているし、嫁もそれを知ったやけ酒の勢いでストーカーである主人公のところに乗り込んで逆に犯したりしている。
でもこれ、百歩譲ってそんなことがあり得るとしても、主人公のほうは、夢にまで観た女性がいざ目の前にいるそんな状況だと、立たないんじゃないかなぁ……? まあ、そんな危惧を回避するために、以前から商売女とはやっている、という設定にしてあるのかもしれない。
それ以後は、嫁のほうも、覗かれていることを前提に以前にも増してカーテンを開けてセックスしたりする。それだけならそんな趣味の人と割り切れるのだが、キモいストーカーを家に呼んで、夫寝ている隣でやったりするところまではさらに百歩譲れるとしても、夫が留守の時にまでやるのは理解できんなぁ……。
この嫁、ストーカーに夫の不倫をバラされて自分との結婚を迫られた時も、金のため(ブランド服を買ったり)に貞淑な妻を演じているだけだと言っている。
で、主人公に結婚指輪をねだるのだが、頑張って主人公が指輪を買った時には左遷された夫と一緒に引越ししていて家はもぬけの殻。
そこへ侵入しようとして巡回中の警官に職質されて逃げているところに嫁と夫の車が通りかかるのはいくらなんでも、ご都合主義を通り越してあり得ないけどね。
ただ、そこへ重ねてデリヘル嬢が通りかかって、主人公を応援するのにはグッときた。
この作品、デリヘル嬢も好きな相手に中盤で袖にされたりと、主要登場人物4人(主人公、デリヘル嬢、嫁と夫)を、一方的な視点からだけでなく、しっかり描きこんでいるのだ。
ただ、嫁の性格というか、意図だけは最後までよく分からんけど。これが結婚相手がエリートサラリーマンとか、金持ち老人で後妻業とかならわかるけど、部長とはいえ、大したことなさそうだし。でも、逆襲には名字が監督と同じ女性名がクレジットされていたので、監督の奥さんが書いている? だとしたら、一方的に男性に都合の良いキャラにはしないはずで、女性視点でも理解の及ぶ範囲内というか、知り合いに思い当たらなくもない設定なんだろうけど。
とは言え、嫁役の女優さんは長澤まさみ似でワンレンで、綺麗な胸だし、絡みシーンも多いので、ちょっと考えさせられて、冴えない野郎どもを後押ししてくれるという意味においては、良いピンク映画であるといえる。