思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ウォーロード 男たちの誓い』☆☆☆☆

韓国映画みたいな邦題だが、原題は『投名状』。中国における、義兄弟の誓いのことと思えばいい。
内容も途中まで、というよりラストまでよく分からない。ラストまで見れば、紛れもない名作であることが分かるのだが、そこまでに、レンタルとかなら途中で観るのをやめてしまわないか心配になる(^_^;)
序盤までは、『項羽と劉邦』とか『水滸伝』みたいな、盗賊だった主人公たちが軍に入って不遇な境遇から脱出しよう、という話に見える。ジェット・リーは、全滅した軍隊の、ただ一人の生き残り。
それが盗賊に入って活躍する、という『黒衣の反逆』とか『楊家将』みたいな話かと思うでしょ?
リンチェイ映画には珍しく恋愛、それも義兄弟の妻との不倫、という異例中の異例な展開も匂わせつつ、戦いは続く。
リンチェイのアクションシーンは、合戦中に1度と、ラストに1度くらいで、この頃から体調が悪かったのかなぁと感じさせる。リアル志向の戦争もの、ということもあってか、あまり飛んだり跳ねたり、という感じは少ない。リンチェイのキレキレのアクション目当てだとすると、本作はその満足感は得られない。
が、それを補ってあまりあるドラマがある。
途中までは好戦的で非情に思えて、むしろ義兄弟三人の内では、金城武の役柄こそリンチェイにふさわしいと思わせる。終盤に官憲サイドになってしまうことも、違和感を禁じ得ないところ。
だがしかし、全ての違和感はラストに解消するのだ。
ただ、劇伴は、ちょと首を傾げるところが2、3箇所あった。ピアノを使った悲劇的なメロディとかは良かったけど。
後、リンチェイの心の揺らぎを炎ごしの空気の揺らぎで表現する撮影が数カ所あって、それは良かった。後は、降伏した兵士をこれまた泣いて射殺するシーンでは、敢えて敵兵を映さない、とか、撮影は名のある人らしく、ハリウッド的で、見所が多かった。
余談ながら、吹き替え版は小山力也が担当で、最後まで観てもアンディか金城が喋ってるんでしょ? と思ったらリンチェイだった、ということが何度もあって困った(´д`) リンチェイの吹き替えは池田秀一の声が染みついているもんで。

以下ネタバレ

本作を一言でいえば、裏『英雄』である。自らの幸せを犠牲にして、民のため、天下安泰のために生きる。大事の前には、泣いて馬謖を斬る覚悟が必要、という話なのだ。
そのために、自らのみならず、義兄弟の次男(アンディ・ラウ)のみならず、恋するその妻の命すら捧げるという点においては、『英雄』よりも一歩進んだものとなっている。それに気づくラストあたりで、これはリンチェイはラストに死なざるを得ないなぁ、というのがどうしても『英雄』を観た人なら想像がつく。

2007年 中国・香港