思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

アップグレード




☆☆☆☆

見ながらずっと「これ、観たことあるよな??」と思いながら、今に至るまで思い出せなかった。序盤に事故るところ、郊外の自宅から、金持ちの地下屋敷に行くところなど。こういうの、何が似た元なのか探すの、難しいんだよなぁ……。(もしかして観たけど忘れているだけ? と思って感想文を探したが、やはりなかった。『プリズナーズ』だったかなぁ・・・?)
事故で妻を亡くし、下半身付随になった主人公は、仕事で知り合っていた天才が密かに開発していた(作中ではそう呼んでいないが)ニューロンチップ「ステム」を埋め込み、体の自由を取り戻す。それどころか、ステムが脳内に語りかけて来るわ、おまけに、ステムが主体になると、超人的な身体能力を発揮することもできる。
このアクションが本作なエンタメ映画としての大きな見どころ。いわばAI/コンピュータに身体を操られた状態を、ロボットダンスにも通じるパントマイムと、『マトリックス』にも似た格闘アクション、そして側転に合わせて(『2001年』のように)カメラを1回転させるカメラワークなどを組み合わせて痛快に演出している。
物語が、自分もそうではあるが、妻を殺した犯人を捕まえる、というシンプルな動機で進んで行くのもわかりやすい。
中盤からは、ステムとの交渉で、アクションや拷問(悪党の容疑者の口を割らせる)の場面では身体のコントロール権利を譲るところなど、某感想動画で言われて気づいたが、『ヴェノム』と全く一緒。良いもんも悪もんも、殺す時は躊躇いなく
ラストはちょっと意外なオチで、好き嫌いが分かれそうではあるが、個人的にはかなり好み。

以下ネタバレ

本作は、どちらかと言えばバッドエンド。ステムが、主人公の精神すら封じ込めるのに、幻覚を見せ続けるのはまあハッピーエンドだとしても、そもそもの発端として、てステムを開発した天才科学者に、主人公へ旧車修理を依頼して、乗ってきたスマートカーを操って事故を起こし、同じく義体化した人物に妻を殺させた。要するに、最初から最後まで、ステムが仕組んだこと。自身をコンピュータチップから、自由に使える肉体にアップグレードするための計画と、その成就を描いたものであった。普通はコンピュータの反乱は、人間に阻止されるものだが、それが実現してしまう、というのが本作の独自性だ。

2018年 オーストラリア