思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

マトリックス レザレクションズ』☆☆★

そもそもの3部作が右肩下がりだったので、それの続編と言われても全然期待してなかったが、監督は継投だから正統派続編ということで、万が一、ということもあるので一応ウォッチしてみた。
最初が『1』のリメイク? と思いきや、ちょっと別の人物の視点から描かれる。特に序盤は、3部作が、キアヌが自分をモチーフに作ったゲームであり、そこからの誘いの手が来る、という『1』を『シン・エヴァンゲリオン』のようにその映像を映写(!)しつつ直接的になぞって展開する。また、キアヌの会社に、続編の製作依頼が来て、スタッフが「マトリックスの魅力、本質とは?」「続編のあり方とは?」なんていうブレストをするあたり、メタ的な展開で、この辺は三宅監督が「パート4から7」について語っていた作品群にも通じるものがあり、この辺は、面白くはないが、通好みの展開を予感させた。
ただ、そこから実際に現実世界に行ってから、中でも再度マトリックス世界に侵入してからは全然ダメ。
スターウォーズ7』ではレイやフィンにあたる、本作のメインに(俳優的な)魅力がないのはしょうがないとしても、『マトリックス』のキモであったアクションがダメダメなのだ。3部作には各作品に最低2箇所くらいはあった印象的なアクションシーンが皆無。動きとしても独創的なものがない上に、1カット内の登場人物が多い上に動きが錯綜していて、おまけに手持ちカメラで撮影しているものだから、何が何だかよく分からない。やはりユエン・ウーピン御大が抜けたのが致命的なのか。
序盤のゲームクリエイターたちが言っている「バレット・タイム」にしても、本作でアップデートされたものとして二種類のバレット・タイムが出てくるが、動いているかいないか分からないキアヌたちと、普通に動いているアナリスト、というのは、スピードに差がつきすぎて、ほとんど止まっているのと、動いているのと変わらない。キアヌたちはもうちょっと早くないと効果が半減だろう。
ファッションも格好良くない。
音楽も、ショボイ楽曲かと思いきや、本作のために書き下ろされたと思しい挿入歌は良いとしても、劇伴がビートがなくてドライブ感がないし、全然印象に残らない。

以下、ネタバレ

クライマックスも、街中をバイクで逃走するのは『リローデッド』をオマージュしているのはいいのだが、暗いし、ごちゃごちゃしていてよく分からない上に、爽快感も絶望感もない。一般市民が群衆で襲ってくるのも、『ワールドエンド』でもっとすごいのを観たしなぁ。
ラストに、覚醒するのがネオではなくトリニティーであった、というのは意外で良かったのに、そこから無双シーンがあるかと思えば、それもない。それさえあったら、スカッとして劇場を出られたのに、残念。ラストに二人で空を飛ぶシーンは、同じウォシャウスキー監督の『ジュピター』で空中を飛ぶシーンを思い出した。