思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』☆☆☆

無印だけど、三部作のパート1に当たる。原作は既読で、『ガンダムエース』で最大限に宣伝していたので、期待は膨らむのだが、完全値引きシャットアウトの映画公開にドン引きして、劇場には見にいかず。ネットでの冒頭10分で「おやおや??」と全然面白くないのにさらに不安は高まる。MS描写は絶賛されていたのだが・・・。
本作の感想を一言で言えば、尺(と予算?)を潤沢に用意されると、大抵の場合はダメになり、制限が多い方がえてして傑作が生まれる、というジンクスを痛感した一作。
実写を意識した芝居と言えば良い意味かもしれないが、編集は最近の映画とは真逆の、実に間延びしたもの。セリフがゆっくりであることと相まって、早送り(1.3倍とか)でちょうどいいテンポなのだ。観ている間じゅう、戦闘シーン以外、ずっとイライラしっぱなしだった。
これと比べると、いかに富野アニメが演技も、セリフも、レイアウトも濃密でハイテンポであるのかがいやでも分かる。セリフがほぼ原作小説のままであることからも対象的に。本作を『逆襲のシャア』とか『F91』の絵コンテの密度で作ったら、40分くらいで収まるのではないか?
又、作画は基本的には頑張っているが、作画監督が10人近くいる割に、カットごとのバラ付きが結構あり、特にハサウェイは、主人公の割にキャラ(個性)の弱いデザインでもあるので、それが顕著になってしまっている。
逆に、美術は異常なまでに凝っている。市街地の作り込みもそうだが、植物園ではまるで実写かと思うほどの凄まじさ。別にキーとなるシーンでもないのに(´д`) 無駄な労力とはこのこと。
ギギというヒロインの存在が、本作の人間関係のキモともいうべきなのだが、これに関しては判断保留、というところ。原作にもある、少女と大人の二面性、という部分はうまく表現できていると思うが、政府高官である老人の愛人、という立場に関してはほぼ表現されていない。唯一あったのは、ホテルから避難するシーンで、エレベーターに乗り合わせた男女の、女の胸から汗が垂れるのを見逃さず、彼女も自分と同じであることが分かる、というシーンくらい。原作を知らない観客からすると、フィルムだけから判断する限りでは、ガンダム的には、ララァとクェスを合わせたような、はたまたプルをリアルタッチにしたような感じになっている。
MSアクションは、中盤の市街地襲撃シーンが素晴らしい。人から見てのMSの巨大感を表現したものでは『F91』とはまた違ったベクトルで、『08小隊』を超えて、『ガメラ3』的な終末観を醸し出している。エメラルだが爆風・爆圧に備えて耳を塞いだり、ビームの飛沫で火災が発生したり、というのはこれまでなかったリアルな描写。
マニアックな視点では、原作にいたメッサーというキャラは、MSと紛らわしいからか、抹消されている(^_^;)
キャラといえば、エメラルダとか、ハゲで周囲がツンツンヘアの連邦軍の副官とか、ちょくちょくマンガチックなデザインのやつがいるのが気になった。
メカ描写も、基本的には過去最高レベルのリアル寄りの素晴らしいものだが、こうなると、余計に『ゼオライマー』みたいなクスィーとペーネロペーの異形さが気になる。ここまでリアルな世界観だと、やはり『センチネル』的な、地に足のついたデザインにして欲しかった。とはいえ、ガンダムビジネス的に、今更過去を全否定するわけにもいかないだろうなぁ。
いや、こういう演出にしたいなら、そういうデザインの『ガイア・ギア』にするべきだったのだが・・・。
マン・ハンター用に腰に機銃座がついたジェガンだが、ちょっとやり過ぎでしょう。カトキデザインとはいえ、監督か玄馬氏のアイデアかもしれないけど。対人用なら、トロハチなどのプチ・モビやミドル・モビルスーツであるドラケンが最適だと思うけど。

2021年 日本