思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火

☆☆☆★

戦車マニアの間では、ある意味、有名な映画。実物そっくりのタイガー戦車のプロップが制作されたものの、結局、映画には1ミリも使われなかったのだ。
映画そのものは、T 34/85が活躍するソ連戦争映画として、なかなかのもの。
結局、T 34あたりをベースにしたタイガーも、砲塔以外は全く似ていないのだが、本作のホワイトタイガーは、「ドイツの秘密兵器/カスタムタイガー戦車」みたいな(文字通り)ファンタジー戦車という扱いなので、ギリギリセーフと言える。時代考証的にちょっと違和感があるサイドスカートは、タイガーとは明らかに異なる転輪をごまかすためだろうなぁ。
まず、物語あるいは構造、演出的に看過しがたいところがある。途中に何度か挟まれる捕虜らしきドイツ兵の尋問あたりから違和感はあったのだが、エピローグだ。主人公ナイジョノフ(名前がない、のダジャレ?)とホワイトタイガーとの一騎打ちが終わったら、今まで一度も出て来なかった、ドイツ将校と、ソ連幹部の降伏文書調印とその後、そしてドイツ兵がソ連の都市(レニングラード?)を捕虜として連行される行軍シーンが延々と映されるのだ。合わせて10分以上か。これがなければ、ラストのナイジョノフの教訓っぽいセリフで、本作の押井守っぽいテーマと、内容がうまくまとまったのに、明らかに浮いている。もちろんソ連共産党なき時代の映画だが、ソ連は世界一ぃぃ! と言いたいがために共産党が無理矢理挿入したエピソードじゃないかと思いたくなるくらいだ。
ミリオタ的には、クライマックスバトルでの、ソ連戦車が5、6台ずらっと並んでの一斉砲撃シーンが痺れる。発射の衝撃波で、戦車手前の草が揺れるのだ。また、ホワイトタイガーの猛射撃で戦車乗員が火に包まれるだけでなく、黒焦げ屍体が転がっているのも、あまり見たことのないリアルな描写。
ホワイトタイガー側は、見た目がリアルじゃない分を、カバーしようとしてか、音響に力が入っている。現実の戦車砲では出ないような、金属板を共鳴させたような高めのリバーブが混じっており、非現実的な存在であることと、現実離れしたパワーを感じさせる。このあたりは、『ガルパン』の音響設計に通じるものがある。あとは『天使のたまご』とか?(^^;)音は覚えてないけど。