思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

レッド・アフガン 再


☆☆☆☆★

序盤以外、けっこう内容忘れていた。それもあって、やたら面白かった。
『マッドマックス 怒りのデスロード』プラス『フューリー』プラス『ランボー 最後の戦場』という感じの、ジェットコースター・ムービーだ。
ソ連戦車であるT-55いち輌を使い倒して……と書こうと思ったのだが、冒頭には2輌か3輌出てきていた(^^;)
それでも、カメラワークにしても、アクションにしても、戦車マニアが唸る、格好良くも叙情的な哀愁漂う撮り方だ。走行する戦車の周囲を半周ぐるっと回るショットは、車体下部しかし映らないので、砲塔に自撮り棒的な感じでカメラを付けてるんだろうなぁ。現在ならドローンで車体全体を撮れるんだろうけど。戦車映画ではお約束の、砲塔が壊れたので、手動で回して「間に合うか」というサスペンスもハラハラさせる。
戦争のリアリティ、残酷さもきっちり描いていて、捕らえた敵を履帯で踏み潰したり(主人公がソ連軍である映画をアメリカで作っているから非道なところも随所にある)、毒入り水を飲んだ屍体の腹が膨れたり、ブービートラップ(地雷)を食らった人の手が飛んで腑が飛び出たり。
物語的にも凝っている。
主人公は戦車長ではなく、砲手で正義の人。ちょっとでも怪しいやつは味方でも射殺するのに抗議したら、自分も荒野の岩にくくりつけられて放置される(しかもブービートラップまでセット)。その後、イスラム兵に見つかるが、殺されたムスリム戦車兵から「赦しの言葉」を聞いていたので、命拾いする。だけでなく、共に愛車(?)を破壊することになる。
戦車のほうは、道に迷ったところから、街道が見える地点まで来たと思ったら、地溝があって進めない。地図も、火災があった時にそこだけ燃えていた、というのも良い。
せっかく迎えが来たのに、燃料だけもらって戦車で帰るとか、妙な戦車乗りの誇りみたいなのもしっかりある。
主人公は、自分の戦車の特徴は知り尽くしているので、砲身の最大仰角の上を走って、当たらないようにするとか、ちゃんと、根性や奇跡ではなく、理屈があるのが素晴らしい。
そもそも、主人公の立ち位置が、味方から見捨てられ(裏切られ)、敵と一緒に愛車を破壊し、車長は敵に殺されるが、仲間の戦車兵は逃げ伸びる。でも、最後はムスリムと決別して(都合よく通りかかったソ連ヘリに乗って)戦場を去って行く。
ソ連製でもなく、中東映画でもないからこその絶妙なバランスの展開だろう。ヒーロー映画であれば、「主人公がブレブレ」だと批判されかねない。ヨーロッパ映画的な、不条理な世界を描く、というバランスで良くまとめたと思うかも、陰々滅々とした地味な文化映画ではなく、ヘタな戦争映画を上回るリアルで迫力ある描写をなしているのだから。