思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ザ・バニシング 消失』☆☆☆★
あまり情報がなく録画してみた。
とりあえず、80年代のヨーロッパ映画らしく、舞台はオランダ人がフランスに車で新婚旅行に来た、という設定。
途中で立ち寄った高速道路のパーキングエリアで、駐車中の車から売店に買い物に行った妻が、そのまま消失した、というお話。
それが感覚的には10分くらいの出来事。そこから、なんと誰? という北欧人みたいなもったりしたおっさんが意味不明な行動をとっている、という話になる。
なんといっても80年代ということを差し引いても画質が荒いし、俳優たちも少なくとも現代の日本人の目で見ると美人や二枚目からは程遠いので、観続ける気が萎えるが、見ていると、妙なミステリー感覚が。この映画はどんな構成になっているのか、どんなオチなのか、あまりにも地味だから、逆に気になってくるのだ。
途中くらいまではこれ、荒木飛呂彦的なサイコ描写だよなぁ、と納得して、見る気が出てくる。いやむしろ、一見何をやっているかわからない行動とか、終盤の何を言っているのか分からない対話とか、確実に荒木先生、観ているよなぁ。
感情移入という面からみると、もっさり親父には当然できないが、主人公の男にも、3年経ったとはいえ、彼女ができていたりして、リア充だからこれまたできない(^_^;)

以下、ネタバレ

終盤近くなると、もっさり親父が犯人らしいことはわかるが、どうやって犯行に至るのか、というある種のミッシング・リンク的な構成を楽しむ(期待する)作品なんだと割り切って楽しめる。
ただ、純粋に2つの時間軸が交錯するわけではなく、最終幕では、主人公と車に乗ってからの対話で回想するのが、ちょっと中途半端かなぁ、という気がした。
本作の最大の眼目が、ラスト。
普通なら、最後に犯人をやっつけて「恋人と救出できたり、できなかったけど復讐は果たした、めでたしめでたし」と思うのだが、本作は違う。犯人に口封じとして睡眠薬で眠らされ、木の箱に詰められて殺されておしまい、なのだ。実にブラックすぎる結末(^_^;) その後でも「桜の木下には死体が埋まっている」ばりに、主人公夫婦の死体の土の上にはつがいの木が植えられています、的な、妙な間の長いパンショットがあったりするあたりがヨーロッパ映画的(´д`)