思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

太陽を盗んだ男』☆☆☆
名前だけは何度も見聞した、名作らしいので、観てみた。
個人で原爆を作った男、という設定からしてトンデモだが、映画の方も突っ込みどころ満載。いや、真面目に観ることも可能だし、ほとんどの人はそう観ているからこそ評価が高いのだろうが・・・。少なくとも21世紀の右翼人からすれば、ツッコミ映画としか見えなかった。

てっきり沢田研二版『新幹線大爆破』だと思っていたのだが、アメリカン・ニューシネマ的な反社会的というか、個人主義的な映画だった。
何しろ、原爆まで作っておきながら、爆破に関する希望(要求)が何もない、というのだから。愉快犯以下である。その辺が、目的を失った現代人とか、当時の社会的風潮を反映しているのだろうか。

原爆製作過程も意外と尺を取って描かれるのだが、もちろん簡単にできすぎてもいけないが、真似できるわけもなく、また真似できないようにも描いているはずなので、そこはサクッと流しても良かったんじゃないかなぁ。実験中の事故で、ボヤが出たり、懐いていた野良猫が死んだりするのは良かった(別に猫嫌いではない。ドラマ的に)。

沢田研二の魅力が、私にはよく分からないのだが、菅原文太の方はとにかく格好良い。立っているだけでも渋すぎだが、カーチェイスでフロントガラスが砕けても追いかけたり、ヘリのスキッドにつかまって沢田研二に拳銃をぶっ放したり、実写版『ルパン三世』の銭形とっつぁんか?! という豪華さ。最後は首元まで含めて、至近距離から拳銃の弾を数発喰らっても、沢田研二の首をホールドして吊り上げるという不死身っぷりがすごい。

不死身という意味では、沢田研二も、あまりにも逮捕されなさすぎ。逃走経路までしっかり計画された上で犯行がなされていた『新幹線大爆破』とは、好対照。偶然というか、ビルから落ちても一人だけ電線に引っかかって打撲のみ、交差点で走ってきたトラックの前に都合よくジャンプ台があるなど、あまりに都合よすぎ。

ヒロインの池上季実子がまた『ハウス』の頃とは違う、大人の魅力で、現在の日本映画界で例えると石原さとみに、見た目も演技の感じも似ている。

何回か出てくる、ストリングスが印象的な、メロディアスな劇伴。いいなぁ・・・と思ったらちょっと待てぃ! 『新エヴァンゲリヲン劇場版 序』で第3新東京市のビルが変形するシーンの曲やないかい!? 庵野監督またやらかしていたんかい!(既存劇伴の転用)『エヴァ』の方で、好きなシーンだけあったので、ガッカリ感もひとしおだった。