思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ワンダーウーマン

☆☆☆★

前作がイマイチに感じてたので劇場に行く気はなかったが、YouTubeの検索結果で絶賛が出てきたので、久しぶりに劇場に行くきっかけに。
アヴァンの運動会は、『ハリポタ』的なガジェットと、俊敏ではなく、とても大人に勝りそうには見えないダイアナが一番になるのに萎えて、それは最後までそのまま。香港のカンフー映画なら『新少林寺伝説』とかを始め、動ける子役はいっぱいいるから気にならないのだが……。
ただし、コーラスを交えた劇伴は印象的だなぁと思ってオープニングクレジットを見ればハンス・ジマー。その後も、スピルバーグ的というか、実に良くも悪くも観客にこう受け取ってほしいという感情の説明的なスコアが続く。気楽に観られるので、これはこれでアリか。

前作までのエレキのロック風のテーマはパックでかすかに鳴るだけにして、本作独自のテーマ曲が作られた。これが素晴らしい。北欧風のスキャット入りの交響曲で、オープニングとはほぼ同じだが、ことエンディング曲を聴いていると、不満タラタラだった内容なのに、何故か感動してくる広がりのあるミックス。川井憲次以外で劇伴を買いたくなったのは久しぶりだ。ストーリーは60点だけど、劇伴だけなら90点。

絶賛派が良かったと言っているポイントが、私的にはことごとくイマイチだったんだよなぁ……。やっぱりワンダーウーマンのコスチュームは、冗談にしか思えないし。やってることは80年のそれ。『スーパーマン』とか『スーパーガール』を連想した。アメコミに詳しいレビュー動画によると、最初のショッピングモールのシーンは、過去のドラマ版のオマージュらしい。それと合わせて、スーパーヒーローが一般市民を助ける、カタルシスあるシーンを最初に見せてくれるのは良し。そう、ワンダーウーマンのテーマは、助けること。前作までのように剣どころか、盾すら本作には出てこない。基本的に肉弾戦以外には、ムチと額のブーメランしか使わないという徹底ぶり。

実は本編中にはワンダーウーマンという単語はいちども出てこない。W W84というタイトルも、84年の世界大戦という意味がダブルミーニングになっているんじゃないだろうか。冷戦真っ只中で、なおかつ全面核戦争に突っ込むことになるのだ。

しっかりと伏線を回収する脚本は素晴らしく、本作の残念ポイントは、アクションにある。スパイダーマンみたいに飛び回るのもどうかと思うし、格闘シーンもイマイチ。空を飛ぶシーンもなまじ尺を長くとっているので、「どうやったら格好良く飛ぶ決めポーズとれるかなぁ?」とあれこれ試してる感が満載で、これまた格好悪い。
まだ良かったのは、能力が弱まったことで緊迫感が出た、カーチェイスシーン。道路を高速で走るカットはやっぱり『ゴジラVSキングギドラ』のアンドロイドみたいで不自然だったが。空を飛ぶのは、脚本的には良いのだが、見せ方がなぁ……。ムチをプロペラみたいにするのは『Gガンダム』の東方不敗かと思ったし、カミナリにぶら下がるなんて、ツイ・ハークでもやらないファンタジーで、燃えるべきところなのに、萎えた。制作会社のロゴかよ?!

猿の手の代償もわかりづらかった。論理的な等価交換が成立してないでしょ?
ラストで全世界の全員が望みを取り消すのも、都合良すぎる。
てっきり、息子が「元のパパに戻って」と願うことで、能力を失うと思っていたのに。

何より、息子が日系人なのは、妻が日本人なのかと思ったのだが、結局1秒も登場せず。あまつさあえ、子供のころはアラブ人?
大人のマックスはどう見ても白人でしょ? 詐欺師として成功するために成形したのかと解釈したが、こんなに尺が長いのに、あきらかに説明不足でしょ。

ライバルたるチーター(本作だけ観ているとわからなかったが、ワンダーウーマンのライバルらしい)の、冴えない女の設定は良くて、二人の関係だけで一本作っても良かったと思うが、変身するためには猿の手が必要であり、そのへんも脚本が複数の要素をうまく絡めている部分。いかにも『セックス・アンド・シティ』みたいなドレスアップには私的には失笑したが(^^;) ただ、どう考えても彼女は願いを取り消してないのに、世界が救われるのはおかしいのでは?

ワンダーウーマンの金の鎧が、一部では『聖闘士星矢』のサジタリウスのクロスだと言われていたが、ちょっと戦ったらすくまヘルメットが外れるところまで『聖闘士星矢』と同じだったのには笑ってしまった(^^;)