思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『あの日』小保方晴子
☆☆☆★

「はじめに」を終え、本章を読み始めると、誰でも違和感を覚えるだろう。これ、彼女が書いてないやろ……ということを。確実にゴーストライダーが書いている文体なのだ。本書は、正確には
小保方晴子の「あの日」』講談社編集部編
とすべき。
だが、本書を最後まで読むと、それも無理ないと分かる。問題発覚後の内部・外部の査問だけでなく、マスゴミ(その図々しい筆頭は毎日新聞NHK(またか!)だそうだ)の取材攻勢(マスゴミ・ハラスメントまたはジャーナリズム・ハラスメントという言葉を作るべき)によって自殺一歩手前まで心身ともに憔悴した彼女が、自分で手記を書ける筈もない。ロングインタビューをまとめたものだろう。
だが、それならそれで、取材班の視点でノンフィクションとしてまとめるのが誠実な姿勢だと思うのだが……。
前半は、彼女の自叙伝なので、あまり興味深いものはなかった。自分で書いていないことによる文章的な不自然さも目立つし。
いざ、事件が起こってからの内部事情のほうは、俄然面白くなる。マスゴミにはほとんど出て来なかったところだからだ。

「若山先生が作った細胞を、若山先生ご自身が調べて「おかしい」と言っている異常な事態」

これによると、真犯人は彼女の理研における指導教官的な論文の共同執筆者・若山氏らしい。
ただの彼女の責任転嫁、言い逃れではなく、発言が二転三転した事実など、典型的なお調子者の言い訳の手口である。

STAP細胞に群がった悪いやつら』と本書を合わせて読んでみて、私の推理はこんな感じ(やっぱり複数視点は重要やね)。
この事件は、バイオ分野で金儲けあるいは名前を売ろうとした若山氏が、ハーバード大に間借りしているバカンティに「これまで指導した中でもベスト3に入る学生」と評された(ホンマかいな、という気がするが)ウブな小保方氏を利用して起こした捏造事件ではないだろうか。データの捏造なんて、新薬の臨床試験とかではよく聞く事件だしね( ´Д`)
特に、実験に使う細胞の入手先と保管が共に若山研究室である、という本書の記述が事実なら、これは決定的証拠と言って過言ではないだろう。

しかし、『あの日』というタイトルはなんとかならなかったものか……と読む前は批判的だったのだが、読み終えると、「学生時代までは良かった……」という、自殺直前の心境を表したものだと分かる。