思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ぜったい完成! プラモデル塾 ミリタリー専科』長谷川伸二著/工藤ケン画
☆☆☆

NHK出版ということは、元は教育テレビの趣味講座か何か?初心者向けの一冊。
イラストページと写真ページの割合は6:4くらい。しかも、イラストページでは「本書では塗料は水性アクリルを使う」とあるのに、長谷川迷人の製作記事/写真ではミスターカラーだったり、要するに長谷川迷人の本と、工藤氏のマンガと、二つの異なるハウツー記事が交互に混ぜられているという、どちらの著者の得にもならない、不誠実な構成。マンガパート、写真パートと完全に分けて欲しかった。
ただ、マンガでのプラモ製作法、という体裁には、八十年代的な懐かしさがあった。
ちなみに作例は、ハセガワのヨンバチ零戦タミヤの35キングタイガー、同じく350の最上。
基本の再確認や、誰にでもできるテクニックやツールの紹介という意味で、勉強にも(少し)なった。









『もし星が神ならば』グレゴリイ・ベンフォード&ゴードン・エクランド著/宮脇孝雄
☆☆☆★

高い確率で、ベンフォードがプロットを立て、エクランドが執筆したと思われる合作。
タイトルにもなっている、異星人の宗教(?)を始め、設定やガジェツトはとてつもなく魅力的だが、ひとつの長編としては完全に破綻している傑作的失敗作。
木星が、ときどき、広範囲にわたって電波を発することはわかっている。そういう電波嵐は一世紀も前から観測されてるわ。(略)ある種の生命体がそのエネルギー源を操作したらどうかしら。ちょうど、大出力の電波をたった一個のトランジスターが変調するように。」
こんな設定もセンス・オブ・ワンダーでしょ?

本作はエピローグを含めて六部構成だが、共通点は、主人公が同じ、というくらいで、内容的には、それぞれが別の中短編と言っていいほど。エピローグでのまとめ、飛躍も、中期以降のクラークの取って付けた感じでもなく、『星を創る人たち』のように伏線を踏まえた飛躍というより、大人の事情で書ききれなかったプロットを羅列しただけ、という感じ。まあ、エピローグの内容をまともに書くと、本書を上巻に、下巻一冊ぶんのボリュームになるだろうが、SF史の1ページに刻まれる佳作に仕上がったことは間違いないのに…。
プロット、設定上で残念な点はいくつもあるが、最大の点は、タイトルになっている、恒星(の活動パターン)を神の意志と崇めて宇宙を渡り歩く異星人と、コミュニケーションは比較的簡単にできるのに、その(説得力ある)理由が明かされなこと。
本編最後である第5部に出てくるタイタンの結晶の正体についても、主人公の消滅後に、時の文で説明することも問題だが、ここは「週刊少年ジャンプ」の打ちきり的に、“書けなくなったので、ナレーションで処理しました”感丸出しで、しょうがない感もする。

そして、もし全てのプロットに対する伏線を、堀晃か石原藤夫ばりに回収できていれば、傑作になっていたこと間違いない。
壮大な設定が好きなら、押さえておいて損はない。隠れた怪作。