思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『サイボーグ士官ジェニー・ケイシー(2)』
☆☆☆★

舞台は宇宙でのカナダ宇宙軍対中国宇宙軍に…とは行かず、すぐに地球を舞台にした、前巻同様のハードボイルド路線に戻ってしまう。
それが済めば、終盤は再び宇宙船からの攻撃、あちこちに出没する人工知性、ナノテク、世界規模のスペクタクル、異星人の目的など、盛りだくさん。
と、プロットやガジェツトだけ見れば、サイバーパンクほか、SFの要素てんこ盛りの佳作に見えるが、いかんせん六百ページ弱は長すぎる。『天空の劫火』他、グレッグ・ベアのいくつかの作品を連想させるが、やはり三百ページくらいにまとめて欲しかったところ。
ナノテク作品にありがちだが、本作では、それに加えて人工知性万能論という、輪をかけたご都合主義が少し気になる。ただ、ナノテクのほうは、『ブラッド・ミュージック』っぽかったり、後者は、どこにでも介入できそうで、事態を回収できなかったりと、逆に作者に都合良くピンチを演出するストーリー展開上のご都合主義的に使われている気も。
ただし、これらのてんこ盛り要素や長すぎる原因であるグランドホテル的登場人物の多さは、次の完結編で、うまく風呂敷を広げかつ回収できれば、3巻まとめての傑作として大化けする可能性もありそう。