思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『異星人の郷(上)』マイクル・フリン著/嶋田洋一訳
☆☆☆★
創元SF文庫

14世紀のドイツの片田舎での、異星人との接触を描く。ファースト・コンタクトものではあるが、何かいわゆる「オチもの」系マンガを見ているようだ。そこに描かれているのは、確かに美少女ではなく、灰色のバッタのような紛れもない異星人ではあるが、主にキリスト教を中心にした世界観のおかしさを指摘する内容なのだ。
異星人じしんにも、壊れた宇宙船を修理して帰る、という目的はあるが、過去あるいはテクノロジー的に遅れた世界を訪れた探検隊が、現場にあるもので宇宙船を修理する、という話なら、人類メインの話でも良かったと思うのだが…。
物語は時折現代パートが挟まるが、別に現代からタイムスリップしているわけでもないので、サスペンス性は薄い。その2つをどう繋げるかが、ミステリーまたはSFとしての腕の見せどころだろう。少なくとも上巻だけではなんとも言えない。
最初は、馴染みのない中世ドイツという舞台にとっつきづらかったが、異星人と普通にコミュニケーションするようになってから(そもそも登場するまで百ページもかかるのだ)は興が乗ってきた。
そもそも異星人が、どこから、何のためにやってきてのかは全く描かれていないし、人類がそれについて訊かないのが不自然だと思うのだが、そのへんにSFとしてのどんでん返しがありそうだ。とりあえず下巻に期待。

異星人の郷 上 (創元SF文庫)異星人の郷 上 (創元SF文庫)
マイクル・フリン 嶋田 洋一

東京創元社 2010-10-28