思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『般若心経のナゾことば』桑田二郎
☆☆☆★

妙な本だ。
『般若心経』の解説本、ということで間違いないのだが、マンガというよりも、講演スライド(いまどきはパワポ資料というべきか)という感じ。
1ページ1コマ、と言えなくもない、枠線らしきものは書かれてはいるのだが、1コママンガでも、1コマのコマ割りのマンガでもない。明らかに3、4コマに該当する内容があっても、コマ割りは一切なされていないのだ。

内容自体は、作者が独自に瞑想で実感した『般若心経』の理解を描いたものか、どこかの伝統的仏教の教えによるものか、はたまた新興宗教かはなんとも言えない。
少なくとも言えるのは、阿頼耶識なしに三世を説明するのは、逆にわかりにくくなっているということだ。本書ではそれを魂とか心霊とか表現しているが、それが本書全体を胡散臭くしている。そこが、阿頼耶識を出すと煩雑になるから、という意図からの苦肉の策なのか、指示する教義によるものかが不鮮明なのだ。
また、最後には、サンスクリット語の音韻が重要、という割に全文をそれで読壽しろ、とは言わないのも矛盾している気がした(いちいちサンスクリット語を日本語または漢字に訳す手間が増えるだけ、というのは分かるが)。
ちなみに、マンガとしては、入り抜きのある、懐かしい(逆にちょっと前の新興宗教の勧誘マンガっぽくも見える)もの。ほとんど同じポーズでも、コピーせずに描いてあるようだ。
要するに、おじいちゃんが、孫の疑問に答えながら、懇切丁寧に説明したものをそのまま本にした、というような感じ。単なる解説というより、普通の人の疑問に答えることでの脱線(でもないが)が、本書を大部にしている原因。このあたりもまた新興宗教の勧誘パンフっぽいところ(^_^;)