思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『プレイボール2(1)』
☆☆☆★

そっくりだけどどこか違う、不思議な作品。
第1話は、ちばあきお『プレイボール』の切り貼りか、というくらい、絵柄から構図までそのまんま。大丈夫か?と思うが、次第に絵柄も演出も、作者独自の色が出てくる。これが不思議な感覚を醸し出しているのだ。
違うところを挙げれば、『マンガ夜話』的にいくらでも出てくるが、ざっくり言えば、コマとコマの間に1、2コマ入ってくるのだ。ちばあきおなら入れない。
また、ストーリー的にも、丸井と井口の対決を谷口が許可するなど、まるで凡百の野球マンガのような展開。
とはいえ、丸井が夜中に井口のピッチング練習に付き合う(というより指導・強制する)のはちょっと感動したが。
金属バットと木製・竹バットとかのテクニカルなところもちばあきおがやらないこと。
乱暴にいえば、同人誌で素人が勝手にやっているようなこと(『ドラえもん』の最終回的な)を、商業誌にやっている感じ。
ただ、編集部もその辺は十分に承知していて、その代わりというか、コミックスはカバーから、カバー裏のプロフィール写真、あらすじまで、当時のジャンプコミックスを完全再現しており、泣かせる。巻末の広告ページも、ちばあきおのものだけで、コージィ城倉氏のものはない(^_^;)
ここまでやるなら、タイトルは『続プレイボール』にして欲しかったなぁ…。

プレイボール2 1 (ジャンプコミックス)プレイボール2 1 (ジャンプコミックス)
コージィ城倉 ちば あきお

集英社 2017-08-18


ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない(1)』
☆☆☆★

コスプレ(マンガ再現)度☆☆☆☆
構成度☆☆☆☆☆
演出☆☆☆
スタンド描写☆☆☆★
という感じかな。
奇抜な、マンガならではのキャラに違和感がなかったのは(期待してなかったので)意外。ただし、京兆は除く(^_^;)
会話などの演出面がもたもたしていて、動きのないシーンでは、戦闘中であっても途端にイライラさせられる(単に私がイラチなだけ?)。特にクライマックスの冗長さは、後味がスカッとしない。
原作ファンサービスなのか、次作への伏線か分からないが、山岸ユカコは本作には全く不要。ディレクターズカットで入れるくらいで充分。
あと、細かいところだが、スタンドのテクスチャーは本作のようにつやありではなく、つや消しでしょ?つや消しじゃないと、生物っぽさ(生命感)がでない。

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 スタンダード・エディション [Blu-ray]ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 スタンダード・エディション [Blu-ray]

TCエンタテインメント 2018-03-23

『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』鳥居民
☆☆☆★

歴史ノンフィクションだから仕方ないが、オチを最初に書いてあるミステリーみたい。発売当時から気になっていたので、購買意欲、という意味では妥当なのだろうが……。
もちろん、真犯人の動機の記録など公開されているはずもないので、基本的には、その真相、犯行にいたるまでのプロセスを、状況証拠という形で書いたもの。
読書という意味では、オチが分かっているので、かなり退屈ではあった。

「原爆を投下する前の四ヶ月のあいだ、日本本土上陸作戦で予想される犠牲者の数に懸念を表明する陸軍軍人はいなかった。(略)百万人の犠牲者という数字が登場したのは、戦後になってからの創作である。」

原子爆弾の製造のために、すでに20億ドルをつぎ込んでいた。アメリカ最大の企業、戦争に協力した最大の軍需産業ゼネラルモーターズが1944年(昭和19)につくった(略)総売上額が30億ドルだった。」

ルーズベルト大頭領の(略)あとを継ぐ副大統領のことが話題になって、なんだ、あんな奴がという声が一斉に上がり、悪口雑言になった。(略)かれは同盟国の指導者にも引け目があった。(略)かれには自慢できることがなにひとつなかった。(略)7月4日に巨大な爆発力を持った爆弾の実験が成功したあと、自分の口からスターリンに、私がおよそ尋常でない新兵器を持っているのだと(略)言っておきたい。」

要するに、アメリカは戦後の、ソ連の日本のみならずヨーロッパでの影響力を抑えるための抑止力として原爆の威力をソ連はじめ世界に見せつけようとした。

それだけ分かれば本書を通読する意味はあまりない。
ただし、本書で抜けていることが2つある。
1つは、ソ連は原爆の威力を見て、ビビるどころか、東征を開始し、満州どころか樺太、千島列島まで侵略してきたこと。ポツダム宣言受諾後も、だ。
2つめは重要ながら見てみぬふりをされている問題。なぜ、「原爆を都市に落とす」必要があったのか。爆発の威力だけなら、どこでも良かったはず。読者のみならず著者も気がつかないはずはない疑問なのだが……。これは、青山繁晴氏が言うように「人体実験」のサンプル数が多く採れるからに他ならないではないか!

原爆を投下するまで日本を降伏させるな トルーマンとバーンズの陰謀原爆を投下するまで日本を降伏させるな トルーマンとバーンズの陰謀
鳥居 民

草思社 2005-06-01