思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『名被害者・一条(仮名)の事件簿』山本弘
☆☆☆☆
講談社ノベルス

事件に巻き込まれる体質のキャラはシリーズものミステリーではちょくちょく登場するが(実は名探偵もその中に含まれる)、それを全面に出したのがこの連作短篇集。
一見するとメタミステリー、アンチ・ミステリーっぽいが、まえがきでも作中でも断れている通り、本作はミステリー風のラノベである。
ところが、けっこう伏線もちゃんとしてる(ちゃんとし過ぎてて、世界観が狭く感じるくらいだ)し、SFミステリと言ってもいいくらいのできになっている。特に後になるほどミステリー風味も増えるが、それ以上にSF成分が増えるのが楽しめた。
ただ、返す返すも、こういう作品は小林めぐみ女史に書いて欲しかったなあ・・・というのが個人的願望。テイストとしては『食卓にビールを』にミステリー風味を増量した感じで、特に文体とかも、小林めぐみ作品と言われても区別つかないくらいである。
「男が女の子のやらしい姿を見たいと思うのは自然なこと。でも、現実にそれをやったら変態になる。だからファンタジーの世界で安心してその夢を叶えてくれるマンガも必要」
「『そら☆ねこ』がなくなったら、太秦くん一家は路頭に迷います。作品としては超くだらなくても、それが誰かの命を支えているというのは、けっこう感動的ではありませんか。」
『そら☆ねこ』というのは作中に登場するお下劣萌えマンガのこと。太秦くんというのはそのマンガの作者。