思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

「人間失格」殺人事件


吉村達也
☆☆☆★
実業之日本社ジョイ・ノベルズ

久しぶりの「刑事志垣&和久井」シリーズ。温泉殺人事件シリーズではないが、副題をつけるなら、『不老不死温泉殺人事件』になる。
太宰治ファンというカップルの、太宰評から始まり、連続女子高生失踪事件を追う志垣たちと、青森新聞東京支局の、2本が並行して進展する。そして、カップルの男のほうが、エコテロリストとして、青森のゼネコン社長である実の父親を殺害し、ダイナマイトを奪って東京でテロを行う予告を、元カノに行う。
作者の小説のファンとしては、SFならともかく、ミステリーでは異例のスケールの大きな展開になって驚く。
ただ、読了してみると、やっぱり本作も、「ミステリー」ではあるものの、「推理」はない。あくまでも、真相が読者に明かされるのは、捜査人のひらめきと、犯人の独白によるもので、捜査や推理で、手掛かりをひとつずつ辿っていく、推理小説ならではの過程がないのが残念。
また、参考文献で挙げられている猪瀬直樹の『ピカレスク』の丸写しかもしれないが(こちらは未読なので)、太宰治が、こじらせ左翼の、クソ野郎だメンズであることはよく分かった(^^;)

以下ネタバレ

また、意外だった東京のテロも、実行されないのはもちろん、予告すらウソ、というのは拍子抜け。せめて、爆発の手前で発見する、お約束の展開がないと、全然盛り上がらないよなぁ(^^;)