思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『円周率殺人事件』
☆☆☆☆
赤川次郎吉村達也、そのほか新本格作家が書いていないのが不思議なくらい、ありそうでなかったテーマのミステリー。
円周率にまつわるあらゆるトリビアを突っ込んで、なおかつ推理合戦を全面に押し出した佳作。
ミステリとして興味深いのが、最大の容疑者が存命かつすぐ手の届くところにいるのにもかかわらず、事実上一言のセリフもないこと。
また、いわゆる名探偵の口調を、本人を目の前にして意識的に真似る刑事(主人公)というのも、これまたメタミス的にありそうもなかった、ミステリマニア一読の展開と言える。
ラストにも一捻りあって、全体に初期の吉村達也を思わせるテイスト。

円周率殺人事件 (メディアワークス文庫 お 1-2)円周率殺人事件 (メディアワークス文庫 お 1-2)
大坂 翠

アスキー・メディアワークス 2012-04-25