思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

呪い殺しの村

小島正樹
☆☆☆★
双葉社

名探偵・海老原シリーズ。横溝正史的な因習ある村で、ご丁寧に千里眼、予知、呪殺という3点セットが。おまけに東北から遠く離れた東京では自殺偽装事件、警視庁管理官が目撃証人という、瞬間移動&密室殺人。370ページにしちは、なんともメガ盛り島田荘司本格ミステリーである。
目撃証人でもある警視庁のニ枚目・鴻上は、最初は民間人である海老原に捜査情報を漏らすことを頑として拒絶するのが爽快だったのだが、最後には結局ワトソン役に堕してしまうのが情けない。
終盤には、犯人が次々と転調するツイストが読みどころだが、たくさんある事件のトリックは、どれもインパクトに欠けるかな。特に鉄壁の密室殺人に関してはライトミステリーレベルかつ、敢えてあの状況で実行するリアリティがなさすぎ。
物理トリックよりも、動機や人間関係にまつわるしかけのほうに重点を当てて読めば、より楽しめるだろう。