思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

魔界百物語(3)

吉村達也
☆☆☆

『グィン・サーガ』の当初構想に匹敵する全百巻を予定していたシリーズだけに、川井舞が氷室の目の前に現れる(再会する)のは、数十巻経ってからだと思っていた。それがもう再会を果たすとは。
QAZの正体については、さすがに今回提示されたのは、完全なニセの真相だった。それも2つも。
本編としては、舞の付き合っていたのが、ラスベガスで活躍するマジシャンで、その母親は(またまた)新興宗教の教祖。彼の今カノが舞で、元カノが、数年ぶりに再会した直後に自殺した。
例によって、謎の提示じたいは魅力的(なんと言って、膨大な著作の中から、リメイク/再構築に値するものを選んでいる訳だから)だが、氷室がいつの間にか、どこからか手に入れた証拠を元に真相を犯人に突きつける展開は、相変わらず。……というか、操作がないくせに、話を聞いた瞬間に全てを悟る天才型でもない、これこそが氷室想介シリーズの特徴なのかも。
作者が造詣の深い、マジックをテーマにしており、本作オリジナルのイリュージョン系のマジックでは、作中でネタバラしをしている。吉村達也ならではのあっさりした開陳シーンは、拍子抜けするが、イリュージョンのタネなんてこんなもんだろう。
本作では、被害者が、幼少期に両親を惨殺したのが、成人後付き合っだ男なのか、双子の弟なのか、という謎がテーマになる。ただ、これも妙にツイストさせることを目的としすぎて、真相を覚えていないのは、トリックやミスリードを仕掛けた理由が弱かったんだろう。
本作ではQAZの「謎」がわかったと、二つの「真相」が語られるが、どう見ても無理矢理の、捨て「真相」なので、全然驚けない(´Д`)

以下ネタバレ

幼少期の両親殺人事件を、最初は一卵性双生児の犯行と思わせて、二卵性双生児だというツイストは、確かに心理的盲点をつくものだが、結局はそれも真相ではなかった、というので、読後には忘れてしまった(^^;)