思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

チタン

☆☆★

各所の評判が良かったので、どんなキワモノなのか期待したのだが、だいぶ違った感じ。
冒頭に、事故で体に金属を埋め込むことになった少女。成長すると、右耳の後ろに大きな傷跡があるにも関わらず、人気の車のコンパニオンガール(レースクイーン的な)になっている。そんな美人でもないし、見た目の説得力はないけど、「この世界ではそうなのね」と受け入れないと話が始まらないので仕方ない。
彼女は自分に性的に迫ってくる奴らには、それが男だろうが女だろうが、簪で耳を刺してぶっ殺す、「必殺」連続殺人鬼でもあった。
ある夜、展示車の中で(彼女ひとりで)ドッタンバッタンしたら、しばらくしたら、下腹がぽこっとして、妊娠検査薬をテストすると妊娠したらしい。本作は、とにかく説明が少なく、ここでも妊娠検査キットの反応の見方を知らない人には、陽性なのか陰性なのかも分からない。見ていれば明らかに胎児がデカくなっているのは分かるし、説明しないなら、そんなシーンも入れないで欲しいかも(´Д`)
そんなある日、連続殺人が発覚して、全国指名手配のニュースが流れる。主人公は、逃亡するため、たまたま目にした失踪者の男に似ていたことから、彼をモデルに、髪をベリーショートにし、鼻を自ら机に打ち付け、胴にはさらしを巻き付ける。
警察に保護されて、失踪者の父親が面会に来るが、父親は彼女を息子だと同定して引き取る。彼は、消防団の団長で、主人公を消防団員として扱う。
彼は、主人公が自分の息子だとは信じていないようでもあり、他人かつ女の子だと分かっているようでもある。
ここからは、お互いがお互いを騙し合っているような、それかいつ破綻するかの、サスペンスが続く。
確かに、色々読み取ろうと思えば、セックス論、ジェンダー論、などもありそう。

以下ネタバレ

主人公が臨月に近づくと、腹が裂けて銀色のものが見えるので、てっきりスチールの金属球が出てくるのかと思いきや、普通の出産シーンになる。破水して出てくるのは、黒い液体で、生まれてきたのは普通の赤ちゃん。ただし、背骨からはこれまた金属っぽい骨が見える。なんかこのへんで(ネタバレかもしれないが)『ハッチング 孵化』や『MEN 同じ顔の男たち』を連想した。そういや、どちらもある種の境界を越える作品だ。
ただし、どうしてもSFファン、理系人間としては、頭蓋骨に金属を埋め込んだだけで、他の生体組織に後天的な変化が起きるはずもない、という常識が邪魔をして、展開を拒否する理性が働くんだよなぁ。頭蓋骨以外にも、子宮が骨盤にも金属を入れたのかと思ったくらいだが、その描写も、成人してから何回か内股が映るが、そこには手術跡はなかったし。
もちろん、チタンを入れたのは単なるキッカケにすぎないことは分かるが、理系人間としては、逆になくても良かった。