思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ザ・レイク



☆☆☆★

怪獣映画だが、タイとハリウッドの合作というのが珍しく、チェックせずにはおれなかった。
てっきり『ロード・オブ・モンスターズ』みたいなZ級かと思ったのだが。邦題も、英語原題通りだし。
日本以外の開示映画といえば、北朝鮮の『プルガサリ』や、マレーシアだったかの『ガルーダ』、韓国の『グエムル』などが思い浮かぶ。
序盤は足跡から始まるエメリッヒ版『ゴジラ』を強く意識させるハリウッドのスタイルだが、中盤は『グエムル』『エイリアン』『プレデター』そして『ジュラシック・パーク』など、モンスター・パニック。長めのエピローグでは、日本でもハリウッドでもない、タイ映画独自の雰囲気になるのが面白かった。
ルックは、人物描写はハリウッドらしいパキッとした画面だが、遠景は、なんとなくぼんやりしているのは、高温多湿という東南アジアならではの気候によるのだろうか。
演出的には、やたら間が長いのが気になった。サスペンスやスリラーにしても、緊迫感が高まるのではなく、特に変化がないので、だれるのだ。そのへんも含め、約2時間というとは長すぎる。その割に、ネタバレ欄で書くような説明は足りないし。演出のテンポを早めた上で説明を足して、90分くらいにして欲しかったなぁ。
怪獣のレンダリングは予想以上に良くできていて、普通に感心した。怪獣映画ファンなら、珍しいタイ映画という意味でも、観ておいて損はない。

以下ネタバレ

本作で面白いのは、怪獣映画かと思わせて、モンスター・パニックであること。序盤に体高6メートル、全長20メートルくらいの怪獣は出てくるが、その後に住民を次々に襲うのは、人間サイズ。冒頭には『ドラえもん』のピー助の卵と同じくらいの卵も出てくる、三重構成なのだ。
人間ドラマとして、4組くらいの男女(夫婦だったり、親子だったり)が登場するが、いまいち区別もつきにくく、もうちょっと整理してほしかった。特に警察側に父娘の人間ドラマはいらなかったかな。
あと、何故か怪物と感覚を共有ふるおっさんが出てくるが、これももうひとつ意味がわからなかった。捕まえた怪物を殺せ、という群衆との対比で、『デビルマン』をやりたかっただけ? 怪獣との共感、という点では『ガメラ3』を連想するし。
怪獣のデザインは親子ともほぼ同じで、プレデターとエイリアンを合わせて、『ジュラシック・パーク』風にレンダリングして、『グエムル』風に演出した、という感じ。それでも、珍しいタイ映画という応援姿勢もあって、むしろプラス要素に。
子供である怪物は凶暴なのだが、親は実はほとんど人間であっても逮捕されるような暴行は行っていない。車にいる主人公たちを睨んでいるだけで、全然『ジュラシック・パーク』みたいに攻撃してこないし。
ラストまで見ると、実は親のほうは湖に棲む、土地の守り神的な存在なのかと示唆されるので、このへんは日本の怪獣映画にも近い思想。モスラとか、バランとか、『キングコング対ゴジラ』のキングコングとかね。ただし、そのへんがだいぶ説明不足でわかりにくいし。
怪獣と共感覚になった男がどうなったのかも、着ていた服が壁画のある洞窟で見つかるだけで、何の説明も描写もないし。