思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ダイ・ファイティング

☆☆☆★

原題も同じ。低予算のノンストップ・アクション。
妻を誘拐されたアクション監督兼俳優とその仲間が、犯人からの命懸けの指令をこなしてゆく。まるでモーガン・フリーマンの某映画みたいだが、本作の特徴は、指示された現場に予め無数にセッティングされて監視カメラの映像だけで構成されていることだ。『エンド・オブ・ウォッチ』と、『エビデンス 証拠物件』『最強殺し屋伝説国岡』を合わせたようなテイストの、フェイク・ドキュメンタリー。
アクションは『マッハ』や『ザ・レイド』などの頑張ってるアジア映画や香港映画、ハリウッド進出以後のジェット・リーっぽい。それを、西洋人らしい、長い手足で武闘しているので、なかなか絵になることは認めざるを得ない。ただし、うるさいことを言わせてもらえば、ちょこちょこコマを落としてスピーディーさというか、テンポを上げているカットが随所にあることは、ちゃんとバレてますよ(^^;)
要するに、アクション映画マニアが、低予算でも気合を入れて作っているのが分かる。ただし、ストーリーは、二重の意味で無理があるかな。いわばアクション映画のスナッフ・フィルムを作るという設定は、いくら妻を人質に取られても、強引だし、ラストのオチも、自主映画っぽい青臭さがある。
特に、監視カメラだけで撮影した体裁なのはまだしも、ステージがいくつも変わる、全てに予め可動式のカメラを設置するって、いったい何百個カメラを買ってん!? という話だ。『笑ってはいけない』シリーズより多いで。実際の撮影では、シーンごとにカメラを設置しているかは、数十台で済むけど。あとは、途中で、映画的には「このシーンには、このアングルからのショットがほしい」というドラマチックなカットは、どう見ても監視カメラでは撮れないカットがちょこちょこあるのも微笑ましい。
でもまあ、『マッスル・ヒート』なんかにも似た情熱は感じる、愛すべき怪作。固有のアクションとして、銃器を敵に当てて、跳ね返ったやつを再びキャッチする、という殺陣が何回かあったのが印象的。ジャッキー映画のそれを発展させたような感じだ。

以下ネタバレ

ラストのオチとして、実は主人公が首謀者だった、というのが本作最大の仕掛け。こういうミステリー映画はいくつもあるが、アクション映画としては前例がないというか、アクションのためには設定やストーリーは強引極まりないB級アクション映画にありがな作品と見せかける趣向と合わせて、面白い試みと言える。