思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

K-19

☆☆☆★

どうしても潜水艦ものは、差別化が難しいので、本作ももしかして見たかも? という懸念が半ば以上ありつつ、念のため観たもの。
潜水艦ものに外れなし、というが、本作は、序盤の段階では「外れかも」と思わせられた。
何しろ、ソ連の潜水艦の話なのに、メインキャストが英語を喋るアメリカ人で、主役がハリソン君とリーアム・ニーソンなのだ。これでソ連の話、と言われてもなぁ……(´Д`)
ただ、よくも悪くも、ハリソン君が悪役というのは珍しいなぁ、とは思った。悪役と断ずるのは語弊があるかも知れないが、独断的で党幹部の意向を最優先する、傲岸不遜なキャラクターなのだ。それが、部下に人望のあるリーアム元艦長(ハリソン君が送り込まれて副長に降格)が対立する、というお馴染みの構図。
CGを使って、潜水艦の壁を突き抜けてカメラが移動するように見せるカットも、そこまで効果を挙げているとは思えないが、まあ、ビジュアル的には違和感なく見られる。
特に洋上から潜水時の、実際の潜水艦を使ったリアリティは充分だし。しかし、あの艦体のデコボコさは、ソ連的な手抜き工事の表現なのか、消音タイルのない潜水艦はみんかあんなものなのか、どっちなんだろう??
実話を元にした話らしいけど、なんでロシアじゃなくてアメリカが映画化するの?? 最後の字幕によると、ソ連崩壊後、十数年を経てようやく、関係者が証言するようになったので、実態が明らかになったらしい。人間ドラマとか、「ホントかなぁ(^^;)」と美談にしすぎな感も否めないけどね。

以下ネタバレ

原潜の、炉心の冷却水の水漏れで、炉心融解か爆発の恐れがあるという事故。福島の原子力発電災害からすると、メルトダウンしこそすれ、爆発はしないような気がするけど。メルトダウンして、船体が溶けて、放射能混じりの水蒸気爆発、っていうのを、途中すっ飛ばして言ったのかな?
原子炉の修理のドラマになってからは、がぜん面白くなってくる。
その前後の、ハリソン君の傲岸不遜さはちょっとムカつく。いくら、『北斗の拳』的に、悪役にも良い心があった、という前振りだとしても。ちょっと、ここがあざと過ぎて、感動出来なかった。なんとなく、ドラマのために現実を捻じ曲げたような臭いがするし。
結局、ハリソン君は善い者(関西弁で言う「いいもん」)だった、というオチで、せっかく、最初に感じた「この映画では、ハリソン君は悪役なんや。珍しいー。これは一味違う作品かも」と期待したのが裏切られた感じ。ハリソン・フォード映画をひとつも観たことがない人なら、そんなことないんだろうけど、そんなやつはいるんか? という話だし。少なくとも、この映画を見ようという人に限っても。