『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』笠井潔
☆☆☆
南雲堂
いわゆるセカイ系ノベルやアニメとゼロ年代ミステリの相互影響、『容疑者X』が本格探偵小説の傑作か否か論争、そして探偵小説と社会批評についての評論集。
セカイ系論については特に反論はない。紙幅の問題もあろうが、ミステリに比べて、挙げられている作品の数が一桁少ないのもまあいいだろう。
『容疑者X』は、そもそも本格の定義が、いわゆる黄金時代の本格と、ゼロ年代の本格とで、変わっているのではなかろうか?というより、20世紀で本格とされていたものが、現在では、より狭いものになった、あるいは絶滅危惧種ゆえに広義に解釈するしかなくなった現状があるのでは? 昨今はミステリー年間ベストに国際スパイ小説とかサスペンスばかりが入ってる時代でしょ?(´Д`)
社会評論と探偵小説の関係は、もちろん次代性と無縁ではないだろうが、それは評論家が食うために作り上げた、ためにする議論のような気がする。(私のように)何も考えずに、単なるエンタメ、騙されるために読んでいる人がほとんどでは?
もちろん、著者が対象としているのは、一般のミステリファンではなく、評論家や、批評もするミステリ作家なのだが。